言霊の幸わう国

乙女がえり ~くるりファンクラブイベント

 重さが気になってキーボードが打ちにくいから、朝はめて出たメタリックのGショックを会社に着くとすぐ外してデスクに置いておく。
 そやのになぜかそのことも気にならず、その時計が刻み進み続ける時間もいろんなことに終わりがあるということも調子よくすっかり忘れてた。
 立ちっぱなしで開演前にすでに腰もちょっと痛くて、足もだるくなってきてたのに、なんや反するようやけど。


 19時を少し回って、くるりの岸田くんと佐藤くん、そしてドラムのサポートboboさんが現れた。
 この日の岸田くんはメガネ。グレーのTシャツから覗く腕は無駄な脂肪がなかった。ほんまいろんな意味でため息が出る。

 1曲目は「さよならリグレット」で始まり、そのあと「マーチ」、「リボルバー」と2曲テンポの速い曲が続いたから、「ミドルエイジにはきつい」と言う岸田くんの言葉どおりに3人ともMCという名の休憩をとってはった。

 開演前からステージ上に茶色のつやつやした譜面台が置かれてたから、あぁ今日も新曲やるんやなと予想はしてたけど、オドロキの3連発。「カラスノポータロウ(と聴こえた)」、「夜汽車」、「ナツノ(恐らく、夏の、やと思う)」。そのあとMCを挟んで、「飴色の部屋」、「ハイウェイ」やった。

「飴色の部屋」では照明が紺に近い青になって、3ピースのシンプルなステージが小さな部屋みたいやった。そこにオレンジ色の照明が交差して、窓から差し込むひと筋の陽射しに見えた。
 短い曲やのに、曲が終わったときずっとその部屋で佇んでいたような錯覚に陥った。
「ハイウェイ」はわたしが、くるりの曲の中でもたくさんあるすきな曲のひとつで、一緒に口ずさみながら頭を揺らして聴いてた。
 この2曲でステージ周辺がちょうどいい湿度のある空気に包まれて、どこかへ浚われそうやった。いつも考えてもキリのないことに頭を使ってるけど、邪魔くさいことやややこしいことやあほみたいなことが箒で掃き終えたあとみたいに、空っぽになってた。そのときは、そんなことにも気づいてないけど。
 で、いつもの「ハイウェイ」の最後で、鼻の奥がツーンとした。

 「手を離してみようぜ
 つめたい花がこぼれ落ちそうさ」


 いろんなことにしがみついてしまうことが多くなった自分に、痛い痛い言葉。


 痛みが落ち着いて次はなんやろなんやろと思っていたら、さっきの譜面台がまた移動してきて、オドロキ2倍の新曲がまた3曲続いた。「鍋の中のつみれ(つくねではなく、つみれでした)」、「ゆかいなピーナッツ」、「太陽のブルース(夏のではなく)」。
 まだレコーディングもしてないという新曲を惜しみもせずにやってみせ、「どう? どう?」と客席に向かって聞く岸田くん。「むっちゃ緊張する、嫌な汗掻くわー」と言ってみせると、それに答えて佐藤くんも、「毛穴中から汗が吹き出る感じがする」と言う。
 やのにまだ続けてライブでやったことないと、シングルの「さよならリグレット」に入っている「pray」をやってくれた。
 そのあとはボガンボスの「夢の中」、最後に「虹」で本編終了。

 いつもならそこで時計を見てしまうんやけど、昨日はもったいなすぎて絶対見いひんと、なんかに祈りたいぐらいやった。


 そこからはファンクラブイベントらしくいつものライブとは違うことをと、インターネットラジオの「くるりのイメージクラブ」の公開収録が始まった。
 デビュー当時の「スペースシャワーTV」に出演したときの映像を見たり、開場時に渡されてた「年末調査」と称された悩み相談にメンバーが答えたり、グッズやメンバーの私物を抽選したり、盛りだくさんの内容やった。
 中でも1番驚いたのは生カラオケやります、とくるりの生演奏で歌ってみませんかという企画やった。岸田くんの「歌いたい人ー!」という声に、手を上げる人がほんまに、しかも結構いるのがオドロキで、結果指名されたのは会社でバンドやってるんですという男女のおふたりやった。
「なににしますー?」と岸田くんに聞かれ、しばらく悩んで「ばらの花」にしますと決めはって、ほんまにくるりの演奏にのってふたりは歌い出した(しかもスムーズに)。
 不思議やなー、おもろいなーと、ふわふわしたきもちでわたしはそれを見ていた。

 ラジオの喋りの間には、曲がかかるのはお決まり。
 それを、ずっとステージ上に用意されてるソファーの上でマイクを片手に話していたメンバーは、曲紹介のたびにそれぞれが楽器を手にして生で演奏した。やったのは「東京」と、最後にこれまた新曲の「デルタ」。
「デルタ」はまたこんな曲作ってー、と胸の中で叫ぶような、ほんまにえぇ曲やった。

 19時に始まって、終わったのは21時半を過ぎてたか。
 長いような短いような、久しぶりに感じる時間の流れやった。


 アンコールの代わりになったラジオの収録中は、岸田くんも佐藤くんもソファから下りてステージに直に座ったり寝転んだりしてて、わたしはそれをちょうどまん前で見てた。
 そのせいか、今日仕事をしながらデスクのパソコンの前でぼんやりしてたら、ともだちのうちに遊びに行ってそこで初めて会ったともだちのともだちと緊張しながらも一緒に過ごしたあとに、昨日は楽しかったなと思い出すような感じで、改めてえぇ時間やったなと思った。

 わたしは、頬杖をついたり、肘をついて手を口元に持っていくのが癖。
 ぼんやりしてるときも、真剣に考えてるときも、夢見心地でいるときも形はほぼ一緒。
 昨日Zepp Osakaの会場でステージに向かって左寄りの1番前に陣取って、太いポールに体を預けているときも同じ格好でいた。
 でもそのときは、レースのカーテンが風で揺れる大きな窓辺で、白馬の王子さまでも待ってるようなうっとりした頬杖。そんな感じ。
 あほみたいやけど、くるりはわたしがしばらく忘れていた乙女心を蘇らせた。

 おかげで今日は、寝不足ながらも幸せの残り香に包まれた1日。


追伸 : 新曲タイトル判明しましたので、12/8に訂正しました。
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by fastfoward.koga | 2008-12-04 22:13 | 一日一言