言霊の幸わう国

岩手懐古・録  【ひんやりした町】

 定時に出発した飛行機は、一路いわて花巻空港へ。
 時間にして1時間20分。
 着陸態勢からベルト着用サインが消え、ドリンクサービスがあり、しばらくしたらまたベルト着用サインが点灯し、離陸態勢に入る。
 そんな一連の動きを考えると寝てる暇もないなと、シートの前ポケットに入っていた雑誌と「ジャルショップ」をパラパラ捲っていた。
 シートは通路側だったので外の景色はそう見えないけれど、3列の真ん中に座るY嬢がときどき富士山が見える、あれは浅間山か、と小さな窓の外を指差し教えてくれた。
 この日の飛行機は通路を挟んで片側が2列、もう片側が3列で、昨年末の忘年会で普通通路を中心にして左右対称にシートは並んでいるものだろうという激論を交わしたことがあり、ほんまにあるんやーと声に出して言ってみた。
 いったいどうやってバランスをとっているのか。素人には謎だ。

 関東上空を過ぎたころから、空港の案内どおり風で機体が揺れ始めた。
 多少の揺れならと思うものの、ジェットコースターのように一瞬体が宙に浮く感じに気味の悪さを感じた。
 何度目かには言葉にならない声が漏れた。
 が、隣のY嬢はというと、わたしはヘーキと涼しい顔。頼もしい友である。
 やっぱりちょっといややわーと言いつつも、昔ネパールのカトマンズ・ポカラ間の飛行機のあの揺れを思うと耐えられそう、なんてことを考えながら気を紛らわせていた。
 花巻に近づくにつれ風は強まったけれど、なんとか着陸完了。
 ほっとひと息ついて、機内を後にした。

 いわて花巻空港は思わず、ちっちゃーと言ってしまうほどのこじんまりさだった。
 予定より到着が10分ほど遅れていたようだったけれど、きっとこの小ささなら盛岡への連絡バスも客を残して出発しないだろうと、ここでちょっとコガトラベル代表の余裕を出してみる。
 案の定、手荷物がなかなか出てこなくてもバスに乗っている人はまだまばらで、しかもいったんバスに乗り込もうとしているのに、運転手さんに乗車券を空港内のカウンターで買ってきてねと言われる始末。
 わたしは、お仕事お仕事とふたり分の乗車券を買いに走った。

 結局空いた状態のまま、バスは空港から盛岡へ向かって出発した。
 キャリーを外のトランクに入れると言われるかと思ったけれどなにも言われなかったので、よいしょと車内へ持ち込んだ。
 こうなるといつものようにそれぞれが2シートを占領し、座る。
 今回共に旅できなかったK嬢がいてもそれは同じで、縦に3列、ふたりが横並びでひとりが後ろ、時にはバラバラに座ったりする。
 そうしていつも互いに笑って言うのだ。
 仲悪いんか。

 その日は横1列で並んで着席。
 そしてあれよあれよという間に睡魔に負けて、わたしはバスが走り始めたのを確認して安心したかのように眠ってしまった。
 盛岡までは1時間弱。
 ぱちっと目が覚めるとすぐにY嬢と目が合い、バツグンのタイミングで下車の案内がテープで流れ始めた。
 わたしたちが降りるのは1番初めに停車する盛岡駅で、そこから徒歩7分ほどのホテルに直行し、とりあえず荷物を預けてお昼と市内観光をする予定を組んでいた。

 道路案内から、盛岡駅が近づいてきたことがわかった。
 バスはだんだん背の高い建物が密集するほうへと向かっている。
 見ただけで新しいとわかる建物が多く、意外に都会やなと思った。
 滑るようにバスは駅前のロータリーに入り、わたしたちも滑るようにバスを降りられるよう準備を始めた。
 道は凍った雪で一面覆われ、地上への第1歩は滑らないように細心の注意を図った。
 空気もひんやりしている。
 気温は1度か、2度だっただろうか。
 ホテルへの道すがら、ちょっと待ってと耐え切れず、わたしはカバンから手袋を取り出した。
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by fastfoward.koga | 2009-02-14 20:28 | 旅行けば