言霊の幸わう国

岩手懐古・録  【光原社入り浸り】

 宮沢賢治の言葉を眺め読んだあと、「資料室」と書かれた部屋へ入った。
 ここは係りの人へ声をかけて鍵を開けてもらわないと入れない場所なので、扉を開けてもらうと暖房の入っていないひやっと空気が外へ流れ出た。
 ここは20畳ほどの広さで、壷や書物などが展示されていた。
 Y嬢とわたしふたりが1番惹かれたのは光原社のカード(名刺?)で、鮮やかな色使いに思わずこれ売ってへんかなと言い合った。

 資料室は、歩き回っていると床板から靴下を通して冷えが上ってきた。
 おかしな歩き方だとわかりながらも足は爪先立ちになり、ときどき片足を反対側の足に乗せたりして冷えを凌いだ。
 がしかし、もう少し見たいきもちより冷えが勝ち部屋をあとにした。

 そのあと少し雑貨屋さんを覗いて、お茶にでもしますかと可否館でひと休み。
 中は思っていたほど広くはなかったけれど、シックな雰囲気で暖かいものでもいただいたらこれまた落ち着きそうな気のするところだった。
 Y嬢はブレンド、わたしはロイヤルミルクティと飲み物だけを注文したのだけれど、ほんとうはメニューに書かれたくるみクッキーも気になっていた。
 でも最近は特に食が細くなっているので、ここで甘いものを食べると夕飯に響くなと、やめておくことにした。

 飲み物が来るまでの手持ち無沙汰な時間の隙間に、そこでコガトラベルのお得意さまであるもうひとりの友人K嬢にハガキを書くことを思いついた。
 いつも持ち歩いているハガキの中から少し悩んでウルトラマン(!)の描かれたハガキを選び、万年筆でまず彼女の住所を記した。
 それを前から眺めているY嬢に、半分に分けるから書いてな、と返事を待たずに自分のスペースに文字を綴っていった。
 わたしはミルクティが来る前にさっさと書き終わり、飲みながら考えたらと4分の1スペースの空いたハガキをY嬢に手渡した。
 しばらく思案していたY嬢も、書き始めたらあまり筆を止めずに渡した万年筆を動かしていた。

 ゆっくりお茶を飲んでいる間に寒さの中を歩き回るせいで妙に力の入る体も緩み、またどこまでも歩いてゆけそうな気になった。
 旅をしているとこういう休息は、どこでどのタイミングで取るかが重要で、結構その1日だけではなくその旅全体の空気に影響する。
 旅では羽目をはずしてみたいきもちもあるけれど、最後まで余すところなく楽しむほうが大切だなと、こんなところでも真面目さを出してしまうのがわたしの旅なのだ。

 こうして予想以上に入り浸っている光原社は、当初出版社として出発したが現在では鉄器や漆器など民芸品を扱う店となっている。
 わたしたちが初めにすっとばした、表通りに面した光原社本店はそういったものを中心に扱っていて、いずれも商品も品よく並べられていた。
 2階から順にゆっくり見て回っていると、レジの横に柚木沙弥郎の「注文の多い料理店」の挿絵のポストカードを見つけたので、どこかでまたハガキを書くかもしれないと購入した。
 1階ではコーヒーカップに少し心惹かれたものの後押しするものがなく、ほんの少し手にとったあと元に戻したけれど、最近ゆっくり買い物にも出かけていなかったので買おうかどうしようかと迷う時間も楽しく感じていた。

 そのあとは、道を挟んだ向かいにあるモーリオを覗いた。
 こちらは岩手県産の食品や竹細工などが置かれている店で、可否館で気になっていたくるみクッキーが売っていたのでここでは迷わずに手にした。
 このくるみクッキー、うちに帰ってから食べたけれどもーほんまにおいしくて、もっと買うんだったなと後悔した。
 お店自体はこじんまりしていて、かわいらしさというか素朴さというか、緩い空気が盛岡はこんな町なのかなと思わせてくれるようなところだった。

 こうして光原社を満喫し、わたしたちは再びいーはとーぶアベニューの通りを歩き出した。
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by fastfoward.koga | 2009-02-22 19:07 | 旅行けば