言霊の幸わう国

ゆりかごの旅 ~四国春旅

 先月、急に思い立って旅に出た。
 行き先は四国。
 久しぶりに、呼ばれている、と強く感じた。

 電車に乗ってのんびりしたいというのが初期衝動で、またいつものように時刻表片手に四国をできるだけ大きく回れるように順路を考えた。
 若干計画に修正を加えつつコマを進め、どんどん馴染む旅の感触を楽しんだ。
 自分の求めていたものが確実に自分に取り込まれてゆくのが、最高におもしろかった。
 といっても、淡々とした感情なのだけれど。

 久しぶりに訪れた四国は、ひと足先に春がやって来ていた。
 今まで春に電車の旅をしていなかったので気づかなかったけれど、桜と菜の花が植わっている駅がとにかく多かった。
 ホームで停車するたびに、わたしは桜の咲き具合を確かめた。

 列車に揺られると、どうしてあんなに安心するのか。
 膝の上で本を広げ窓の外を眺めていると、見えないものの見える気がする。
 今回の旅で1番印象に残っているのは伊予灘の景色で、春らしい陽射しの降り注ぐ瀬戸内の海はそれまで浮き沈みしていた日々のささくれをすーっと撫でていった。

 ずっと伊予灘の海を見ていたら、なぜか急にユーミンの『青春のリグレット』のサビが口をついた。

  「私を許さないで 憎んでも覚えてて
  今でもあなただけが 青春のリグレット」


 どうしてあのときあの歌が出てきたのか、今でも理由はわからない。
 わからないけれど、もう届かない記憶と記憶が繋がったのだろうなと思う。
 
 リュックを背負って黙々と町を歩く。
 列車の中で本を開いたり、眠りこけたり。
 思わぬ雨に苦笑いもした。

 高知では図書館で1時間ほど本を読んだ。
 ひとりで鰹のタタキや鯛めしを食べて、小さくおいしーと叫んだ。
 ホテルの部屋で明日のことを考えている時間は、今思い出しても恋しくなる。

 呼ばれた声に忠実に旅をするというのは、なんと幸せなことか。
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by fastfoward.koga | 2009-04-18 21:10 | 旅行けば