言霊の幸わう国

追う背中

 夕暮れ時に車を運転していたら、信号待ちをしているときにふと鼻先に感じた匂い。
 あ、雨の匂いがする。
 声には出さずに、胸の中で言葉にした。

 雨の匂いがする、という短文で思い出す人がいる。
 その人が雨の匂いをさせていたということではなく、雨の匂いの話をしたのだ。

 電話でのその会話をリフレインしていたら、今日誕生日だということも思い出した。
 毎年送っていたバースデイカードは、同じことしか書けなくて絞りだして言葉を紡いだ。
 届くと、たいていすぐありがとうという電話がかかってきた。
 すぐじゃなくても、ありがとうはいつも言ってくれた。

 どんなことも、あなたが選んだことはあなたらしいとわたしは思うと思う。

 そんなようなことを書いたことがある。
 ズルイなあとあとで電話がかかってきた。
 わたしは彼の逃げ道を遮断したのだ。

 でもそんなことをしなくても、彼はやる人だ。
 ときどき目にする名前を見れば、その姿を見ていなくても想像はできる。
 わたしはその見えぬ姿に、いつまでたっても励まし続けられている。
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by fastfoward.koga | 2009-04-24 22:02 | 一日一言