言霊の幸わう国

吠えずに拗ねる

 会社帰りの道すがら、いくつも灯りが目についた。公園の街灯、飲み屋の看板、信号機の赤。遠くに高層マンションの灯り、そのもっと向こうに昨日より太った三日月。
 電車を降りてから暗い道を歩いていると、後ろで大きな音がした。振り返ると高架を電車が通り過ぎていった。ガラガラ、ガラガラ。横断歩道を渡ったあと、自分の中に居座った寂しさを形容しようと頭の中で言葉を回転させた。さっきの電車のように音も見た目も空っぽなのか、首筋を駆け抜ける風のようなスースーする感覚なのか。そこまで考えて、形容などする必要もないと考え直した。今感じているのは寂しさそのもの。大きさはソフトボールぐらいだろうか。
 期待していたことが叶わなかった。会えると思っていたのに、会えなかった。どうして今日の月は黄色すぎるのか。もっと白くて夜空に溶けるくらいでいいのにと月に拗ねる。
[PR]
by fastfoward.koga | 2009-04-30 22:19 | 四〇〇字・課題