言霊の幸わう国

尾道里帰り ~狐現れる

 くるりのライブが終わった2日の夜、その足で新大阪駅に向った。
 広島行きの最終に大急ぎで乗り込み、一路尾道へ。
 誕生日は関西以外の町でという鉄則を今年も守るべく、あわただしいスケジュールを組んだ。
 なにもそこまで、という突っ込みを自らしつつ、数ヶ月前から大阪駅22時ごろに出る特急や夜行バスなどを調べていた。

 尾道を訪れるのは約2年ぶり。
 前回訪れたときのことを回想して思い出し笑いをしたり、さっきまで見ていたくるりのライブのことを反芻していたら、あっというまに福山に着いた。
 在来線に乗り換えて20分。
 いつもなら東尾道駅を過ぎると見える山側の風景も、その日は真っ暗でなにも見えなかった。
 けれど海の向こうの造船所の灯りが見えたあたりで、やっぱり帰ってきたという思いがふっと湧いてきた。
 まるで里帰りだと思った。
 嫁に行ったこともなければ京都を離れて生活したこともないくせに、里帰りしたときはこういう思いになるのだろうと、もっとそのきもちを強く味わいたくて窓に頭をくっつけて外を眺めた。

 尾道駅では思ったほど降りる人はおらず、改札周辺もロータリーもガランとしていた。
 ホテルへと急ぐ途中、駅のロータリーの端にお稲荷さんが目に止まった。
 前からあったっけなあと行き過ぎかけてやっぱり気になり、体はホテルへ向きながらも手を合わせてから通り過ぎた。
 薄暗い中でも目の端に捉えた、つるんとした薄い灰色の狐が妙に印象に残った。

 ホテルには尾道駅の到着時間を伝えていたので、フロントではテキパキとチェックインの手続きをしてもらえた。
 部屋に入ったら、とりあえず荷解きをしてすぐ寝支度にかかった。
 特に早起きする必要もないけれど、久しぶりに尾道の坂道を歩き回ることを考えたらもたもたしているのがもったいなかったのだ。

 ベッドに入ったのは、結局1時半を過ぎていただろうか。
 暑さよりも乾燥が気になってエアコンは切っておいたら、1時間ほど眠ったところで汗びっしょりになって目が覚めた。
 暑い暑いと寝ぼけまなこでエアコンのタイマーをセットしているときに、ふと目が覚める直前まで見ていた夢を急に思い出した。
 狐に祟られる夢だった。
 腕がもがれて、ここにいては危ないと逃げようとしていた。

 ああ、お稲荷さんでいい加減に手を合わせたバチだろうか。
 そういえば腕を下敷きにして寝ていたような気もする。
 そんなことを考えていたら、またすっと眠りに入っていった。

 翌朝目覚めて遮光カーテンを開けると、想像以上の陽射しが射し込んできた。
 雨の心配はなさそうな空だった。
 だとしたら、残る問題は果たしてどれくらい歩けるか。
 前回大急ぎで歩き回ったせいで途中で膝が笑ってしまったので、今回はペース配分には気をつけるつもりだった。

 のんびりいきまひょ、のんびりな。
 その日は1日そう呟いて歩いた。

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by fastfoward.koga | 2009-07-06 17:36 | 旅行けば