言霊の幸わう国

能ある鷹

 最近、本谷有希子が気になる。

 先日、芥川賞の受賞者が発表された。
 今回はどちらも読み知った名前が並んでいたので、誰が選ばれるのか楽しみに待っていた。
 その中に本谷有希子の名もあった。

 もともと女優を目指していたという。
 でも向いていないと見切りをつけ、劇作家・演出家として自分の名を掲げた「劇団、本谷有希子」を立ち上げた。
 
 ときどき雑誌でその姿を見ることがある。
 視線も定まらないようなどこか惚けた表情。
 ひとつひとつのパーツがこじんまりと、でもバランスよく顔の中に納まっている不思議な顔だ。
 でも、インタビューでは飄々とした様子で語っているのが伝わってくる。

 彼女のお芝居は見たことはない。
 でも彼女が書く小説は、エグイ。
 映画化もされた『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』では、姉が妹を苛める場面ではその執拗さに読んでいて顔をしかめた。
 他の作品もだいたい同じように苦々しい思いにさせられる。
 でも、読んでしまう。
 読んでいてきもちがいいことはないけれど、生理的嫌悪を感じることはない。
 
 先日読んだ『生きてるだけで、愛』では、躁鬱病でまともに働けない女性が主人公だった。
 どさくさに紛れて押しかけた男のうちにそのまま居つき、我が物顔で住んでいる。
 自分があっちこっちの電気を付けっ放しにしておきながらブレーカーが落ちるたびに、男に電力会社にアンペアを上げてもらおうと言う怖ろしいほどのものぐさぶりだ。
 そんな女だから、部屋は荒れ放題。
 その様子を描写する部分を読むたびに、頭の中でその女に厭きれながら部屋を片付け始める自分を想像する。
 だらしないのは、小説の中の世界でも嫌い。
 でもクライマックスを迎える物語を読み進めるうちに、わたしは主人公の一発逆転を願っていた。

 見た目と言葉と彼女が表に出す作品(芝居・小説)の数々のギャップ。
 芥川賞の受賞者が発表されたあと、総評を目にした。
 やっぱり描き方が劇作家だというようなことが書かれていたけれど、いつかとってほしいな芥川賞。
 それが彼女の名を世間にもっと知らしめることができるなら。
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by fastfoward.koga | 2009-07-20 22:52 | 一日一言