言霊の幸わう国

尾道里帰り・番外編 ~失くした方向感覚

 方向感覚を失ったわたしは、これはひとまずと目についた階段を上った。
 上ったところには鞆城跡。
 見晴らしのいい場所でマップを広げ、そこに描かれた地形と目の前の絵が同じになることを確認したあと、しばらくぼーっと角度を変えて海を眺めた。
 
 鞆城跡を離れ、次は常夜燈を目指した。
 そこまでの道は車が走れる通りと走れない通りと、どっちにしても細い道が入り組んでいた。
 そこに木造の建物が並び、うっかりすると同じ道を何度も通ってしまいそうなくらい狭くてのんびりした空気が流れていた。

 この日はお天気がよく、日傘があったらなという陽射し。
 どこで海を眺めても思わず深呼吸をしてしまう。
 常夜燈も心なしか背筋を伸ばしているように見えた。
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 朝は豆乳ジュースしか飲んでいないので、お腹がすいたなと思いつつ次の目的地太田家住宅へ。
 ここは重要文化財にも指定されている鞆の浦の名産「保命酒」を造っていたという元商家。
 江戸時代に藩主から御用所の指定を受けていたそうで、敷地には大きな酒蔵がいくつもあった。
 他にはもちろん店の間に母屋、炊事場、土蔵と、中は広々。
 解説をしてくれる女性の方がこれまた丁寧で、ひとつひとつの場所を細かく説明してくれた。
 それにいちいち頷いたり感嘆の声を上げたりと、わたしより少し年上の娘さんとご両親という3人家族と、若いカップルふたりとがぞろぞろと女性について歩き回った。

 今まであちこちで商家だったというところは見学してきたけれど、太田家は特に保存状態がいいなと思った。
 ちょうどいい季節だったのか、母屋の広々としたいくつもの畳の間に開け放たれた窓から吹き込んでくる風と射し込む陽射しが、その場所をより落ち着いたものに感じさせた。
 パンフレットには平成8年から13年まで保存修理事業が行われたと書かれてあり、確かに保存状態がいいはずだと思う一方で、古臭さを感じさせないのはおそらくそのデザイン性なのだろう。
 女性の説明でも、何度も建物のデザイン性とそれだけではなく実用性にもこだわっているということが何度もくり返された。
 建築を勉強する人たちがたくさん見に来るということだけれど、それも納得。
 惜しみなくすべてを見せる太田家の姿勢に感服させられた。
(写真:壁の上部が外側へカーブしているのがわかります?)
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  家の中を案内されてひと回りしたあと、気になるところだけもう1度見に行った。
 畳の間でごろんと寝転んで本でも読みたい気分だなと、きもちだけゆるゆるにして、実際は正座してぐるりと部屋を見渡した。
 明るくて風通しがよく、広々としたそこを懐かしいよりもっと近しいものに感じた。

 細い道をくねくねと、迷って辿り着いた先がこんな場所とは。
 まるでおとぎ話だ。
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by fastfoward.koga | 2009-08-04 09:57 | 旅行けば | Comments(4)
Commented at 2009-08-04 21:58 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by tabikiti at 2009-08-05 14:17
なかなかのデザイン
流石太田家^^
Commented by fastfoward.koga at 2009-08-05 19:45
鍵コメさん、こんばんは。
いっつも鍵コメさんのお言葉には励まされています。
どうもありがとう。
書いているといろいろ迷うこともあるのですが、そんなふうに言ってもらえると次もがんばろうと思えます。

音博は、先日チケットが届きました。
着々と近づいております。ハイ。

鍵コメさんも暑さに負けず、ふぁいとー!です。
Commented by fastfoward.koga at 2009-08-05 19:45
太美吉さん、こんばんは。
なかなかのデザインですよね。
さすが! ですね(笑)。