言霊の幸わう国

尾道里帰り・番外編 ~脱力開放

 太田家を出たあとは、お腹がすいたよーとぶつぶつ言いながらもマップを片手に同じところに行かないように散策を続けた。
 途中、細い登り坂になった道を行く。
 おじいさんが家の前にある鉢植えに水をやっていた。
 その横をええ感じやわあと通り過ぎ、上った分だけの階段を下りようとしたところで大きな看板が目に入った。
 どうやらお寺らしいと小さな門をくぐると、どーんと大きな建物がそびえ立っていた。
 そこは福禅寺というお寺で、その隣にはわたしが探していた対潮楼があった。

 入口で履物を脱いで、短い廊下を右へと歩いた。
 するとほんの少しで暗いところからぱーっと開かれた明るい場所へ出た。
 目の前には海と弁天島と、そのまた向こうに仙酔島。
 座敷には窓がなく、視線はすーっとそこに導かれた。
 抗う理由もない。
 ちょうど入れ替わりで座敷にひとりになったわたしは、せっかくだからと係の女性の方に勧められるまま真ん中の絶景ポイントに腰を下ろした。
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 海から風がさあっと吹き込んできた。
 その場所にあるなにもかもが、なににも引っかからず留まらず流れてゆく様は圧巻だった。
 赤い絨毯の上で、わたしはひとりぽつんと開放感に浸っていた。

 風に吹かれているうちに体中の力が抜け、頭も空っぽになってゆくようだった。
 気づくと心持顎が上向きになって、なにかを吸い込もうとしている姿勢になっている。
 このままずっとひとりでこうしていたいと思った。
 さっきまでお腹がすいて仕方なかったのに、もうなんにもいらないとさえ思った。
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by fastfoward.koga | 2009-08-05 20:15 | 旅行けば