言霊の幸わう国

尾道里帰り・番外編 ~双眼鏡の先

 対潮楼で、いったいどのくらい海から吹く風を正面から受け止めていたか。
 たぶん数10分。
 でも数時間はいたような気がする。
 ずっといたいなでもな、をくり返していると、ひと組のご夫婦がやって来た。
 これを潮に立ち上がらないとと、特等席を譲るつもりで立ち上がった。

 入口に繋がる廊下の脇に、もうひとつ部屋があるのが見えた。
 あるものはとりあえず流しても見る主義なので、すすすと奥へ行く。
 お寺らしく仏像などが置かれていたので、しっかり手を合わせる。
 ここはお稲荷さんではないけれど、狐に夢で襲われるのはもうたくさんだ。

 諦めきれずに座敷の端からまた窓の外を見る。
 すると係の女性の方が近づいてきて、そばにあった古い鉄の塊を指さした。
 なんだろうとそのまま説明を聞くと、双眼鏡だと言う。
 覗いてみると弁天堂が見えた。
 ここにカメラのレンズを当てると写真も撮れるのよ、と教えてもらったので、何度かピントあわせを試みてシャッターを押した。
c0047602_2224272.jpg
 
c0047602_2274863.jpg
 双眼鏡のあまりの古さに愛しくなって、掌で撫でてみる。
 鉄らしい硬さと冷たさが手から伝わって、口の中で鉄の味がした。
[PR]
by fastfoward.koga | 2009-08-08 22:20 | 旅行けば