言霊の幸わう国

尾道里帰り・番外編 ~双眼鏡の先

 対潮楼で、いったいどのくらい海から吹く風を正面から受け止めていたか。
 たぶん数10分。
 でも数時間はいたような気がする。
 ずっといたいなでもな、をくり返していると、ひと組のご夫婦がやって来た。
 これを潮に立ち上がらないとと、特等席を譲るつもりで立ち上がった。

 入口に繋がる廊下の脇に、もうひとつ部屋があるのが見えた。
 あるものはとりあえず流しても見る主義なので、すすすと奥へ行く。
 お寺らしく仏像などが置かれていたので、しっかり手を合わせる。
 ここはお稲荷さんではないけれど、狐に夢で襲われるのはもうたくさんだ。

 諦めきれずに座敷の端からまた窓の外を見る。
 すると係の女性の方が近づいてきて、そばにあった古い鉄の塊を指さした。
 なんだろうとそのまま説明を聞くと、双眼鏡だと言う。
 覗いてみると弁天堂が見えた。
 ここにカメラのレンズを当てると写真も撮れるのよ、と教えてもらったので、何度かピントあわせを試みてシャッターを押した。
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 双眼鏡のあまりの古さに愛しくなって、掌で撫でてみる。
 鉄らしい硬さと冷たさが手から伝わって、口の中で鉄の味がした。
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by fastfoward.koga | 2009-08-08 22:20 | 旅行けば | Comments(2)
Commented by Popul-marine at 2009-08-09 01:29
おおー、なんだかすごい質感の双眼鏡ですね。
昔の機械のこういうゴツさには惚れ惚れします。

ところでこのシリーズ、司馬遼太郎先生の『街道をゆく』みたいで良いですね。koga先生にも期待しております^^
Commented by fastfoward.koga at 2009-08-10 23:13
populさん、こんばんは。
なかなかどっしりした、手触りに重さを感じさせる双眼鏡でした。
係の女性が「こっちも写真に撮る方多いんですよ」とおっしゃってました。

特に意識せず書いてましたが、どえらい方の名前が出て恐縮です。
旅に出たあとは見たこと、感じたこと、いろいろこねくりまわしたりしがちなのですが、尾道・鞆の浦は馴染む感覚があったせいか捻る必要はないなと感じています。