言霊の幸わう国

尾道里帰り・番外編 ~ゴール

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 バス停までの道すがら、防波堤の上を辿りながら風に吹かれた。
 もうちょっとここでのんびりしたいという思いと、帰りのバスが気になる思いとで揺れる。
 こういうとき、わたしはだいたいのんびりを選べない。
 せっかちは損だなと思うけれど、また来るから次の楽しみにと思えることをヨシとするのだ。

 タイミングよく来たバスに乗り込み、一路福山駅へ。
 ずっと寄り添うように見えていた海はあっという間に見えなくなり、代わりに川が姿を見せた。
 今度鞆の浦へ来るときは泊りがいいなと、振り向いたりせずに思っていた。

 福山駅に着いたら、今度は駅北側のふくやま文学館と福山城(福山城博物館)へ。
 駅から近い福山城を後にしたせいで、ぐるっとお城を囲むように回り込んで文学館に向った。
 14時を過ぎて、陽は強く射していた。
 このまま外にいたらどんどん陽に力を奪われそうだと日陰を探して歩こうとするが、陰になるところは見つからない。
 途中から頭のてっぺんに当たる陽射しを感じないように、アンテナのスイッチをオフにした。

 思ったより遠くに、ふくやま文学館はあった。
 しゃれた造りの建物で、外から見ただけでなぜか中のひっそり感が伝わってきた。
 展示は、福山に縁のある小説家・詩人に関するもので、特に福山市生まれの井伏鱒二については複数の展示室が使われ、順路の1番最後には書斎の復元がされていた。
 恥ずかしながら『黒い雨』も『山椒魚』も読んでいないわたしは、暑さのせいか眠気のせいか朦朧とし始めた頭で展示パネルの文字を一生懸命追った。
 朗読が聞けるコーナーや愛用品の展示など、こうして読んだことのない作家でもわたしは興味津々おもしろい場所だけれど他の人はそうではないんだろうなと、誰にも合わない展示室を辿りながら考えていた。

 すべての展示室を抜けると、建物の入口横に図書・AVコーナーがあった。
 お茶もご自由に、と書かれていて、喉が渇いていたので助けに船だと飛びつくと、猫舌のわたしにはとうてい飲めない熱いお茶が出てきた。
 仕方なく冷めるまでの間にと映像ブースに入り、福山縁の文学者に関する映像を見て待つことにした。
 ヘッドフォンを頭につけ、硬いイスに座る。
 ナレーションの声がここちよく、思わずそこでうとうとした。
 誰も来る気配はなさそうだったけれど、1本10分から20分弱の映像が終わるたびに目を開けて適当にボタンを選んで押した。
 そうして小1時間、いごこちのよい文学館でまどろんだ。

 ここでもまた、あーキリがないと重りがついたように感じる体を持ち上げて文学館を出た。
 広くて長く緩い坂道を上りながら、今度は福山城を目指した。
 いつもは新幹線のホームから眺めるだけだった場所。
 何年も尾道にやって来て、初めてお城へ足を運んだ。
 
 とにかくてっぺんまで上れ、上れと自分を励まし、階段を上った。
 お城の階段は1段1段が高いので、普段運動らしい運動をしていないおかげで、よいしょと言う声が漏れる。

 旅の終わりはお城のてっぺん。
 上がってみると意外なものは見えず、いつもの新幹線のホームが見えていた。
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by fastfoward.koga | 2009-08-15 15:59 | 旅行けば | Comments(0)