言霊の幸わう国

巨大なひよこ

 わたしは、驚かされるのがすきではない。
 自分の知らないところで、自分に関わる何かが進行するのが自己制御できないように思えて、恐怖心を感じてしまうのだ。
 だから誰かがサプライズでわたしのためにお祝いをしてくれたとしても、素直に感謝も喜びも伝えられないことがある。つくづく損な性格である。
 でも毎日の生活の中で、ピリッと効かせるスパイスは時として必要だ。単調なリズムのくり返しはきもちを萎えさせるし、新しいエネルギーも生まない。
 だから自分になり日常に変化をつけて、工夫をしている。でも自分が常に発信元になるというのも、正直限界がある。
 ネタも尽きてきたなと思っていたある朝、いつものように会社に向った。改札を抜け外に出ると、爽やかな風が通り抜けた。駅のそばを流れている川から吹いてきたのだ。全身でそれを受け止め視線を移したら、目の前には黄色い巨大な物体があった。なんとそれはひよこだった。
 ビルの二階に相当する高さのビニールらしき素材でできた巨大なひよこは、川の流れにも動じずに浮かび、大阪に立ち並ぶ高層ビルを見つめていた。惚れ惚れするようなその力強い横顔と、赤い口ばしにまあるく鮮やかな黄色い巨体にわたしは見入ってしまった。
「なんでこんなところにひよこが。しかもこの大きさはなんやねん。」
 結局あとで調べたら、「水都大阪」というイベントの一環だということはわかったが、見たこともない大きさのひよこについて考えれば考えるほどおかしさがこみ上げ、終いにはふっと笑ってしまった。
 サプライズはすきではない。でも相手が物言わぬひよこなら、わたしも安心して笑って受け止められた。
 これはひよことわたしだけの秘密だ。

 課題 最近驚いたこと
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by fastfoward.koga | 2009-09-19 22:41 | 四〇〇字・課題