言霊の幸わう国

いざ よい

 今夜の月は、十六夜。
 月の出が満月より少し遅いので、いざよう(ためらう)という意味で呼ばれるらしい。

 電車の窓から見ていると、昨日と同じ顔のように見えた。
 むむむむ、とそれでもじっと見つめたり、目を細めたりしていたら、やっぱり昨日より右頬が削げていた(ほんとは左)。
 けれど昨晩より早く見たせいか、うさぎが餅をついているのがクリアに見える。

 話は変わるが、月を歌った和歌と言えば、有名なのはやはり百人一首にも入っているこれだろうか。

 「月見ればちぢに物こそかなしけれ わが身ひとつの秋にはあらねど」  大江千里

 と、ここで、高校生のときに国語の授業で「月」を歌った歌について勉強したことを思い出す。
 先生は嫌いだったけれど、この授業はとても楽しかった。
 その中で紹介された歌で、胸がきゅーっとなったものがひとつあった。

 「わが心澄めるばかりに更けはてて 月を忘れて向う夜の月」  花園院
 (心も、夜も、すみずみまで澄みわたってしんしんと更けつくし、
    ふと気づけば、自分は月を見ていることさえ忘れて月に向っていた(大岡信『うたの歳時記3』より))

 十四世紀半ばに歌われたこの歌を知ったとき、ずうっと昔に自分と同じようなことを考えた人がいたのだなと、授業中にふいに時間の流れに思いを馳せた。
 あれから、ン十年。
 今夜も、遠くに近くにとタイムマシンに乗れそうな勢いで思いを馳せる。

 秋の夜は長い。
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by fastfoward.koga | 2009-10-04 20:06 | 一日一言 | Comments(0)