言霊の幸わう国

帰り道

 朝から晩まで講義に飲み会と、充実した3日間。
 若干寝不足になりつつも、誰になにを聞いても、誰となにを話してもおもしろく、テンション的には徹夜でもできそうな熱を感じていた(あくまで「そうな」)。

 授業の最後、お仲間さんたちがみな課題を書き終えホテルやうちへと急ぐ中、ひとりオチのすわりが悪く、席がまばらになってからやっと教室を出た。
 陽が暮れる前にうちへ帰ろうと、最寄り駅の駐輪場に停めたベスパに跨り南へ向う。
 どの道から帰るか走りながら思案し、今日は可能な限り右折左折を少なくするコースを選択した。

 3連休最後の夕暮れ時、京都の町は人と車が溢れ、その間を抜けてベスパを走らせていると賀茂大橋にさしかかった。
 人と車の切れ目から鴨川デルタをちらりと眺めたら、『宿はなし』が口をついて出た。
 そのまま機嫌よく歌い続け、今出川通から堀川通に入ると、それまで正面に見ていた橙色のついた空が右手になった。
 今日1日よく晴れましたと誉められた証のような西の空。
 ああなんだか気分がいいと、ぶるんぶるんアクセルをふかした。

 大きな川を越えるまで、明るさも暖かさも確かにまだあった。
 それが一転向こう側はひんやりし、橙の色は街灯にとって替わられた。
 体が冷えてしまわないように早く早くと家路を急ぐきもちを察してか、信号は静止したように青を灯し、アクセルを握る右手はずっと同じ角度のまま時速60キロで走り続けた。
 途中、いつもように羽が生えて飛んでゆきそうなきもちが、湧き上がった。
 テンションが高いせいか、想像していた疲れも感じなかった。

 国道を曲がったあとは、スピードを少し落としての走行。
 小さな川沿いの道では、思わず後ろに流れた空のうろこが気になって、2度頭を後ろへ振った。

 最後の角を左折し、クラッチを握りギアをローに入れながらブレーキを踏む。
 ガレージの前で左足を地面に着いて、ギアをニュートラルに。
 エンジンを切ったら、はい、お疲れさまでしたと、辺りは静かになった。
 ライトの消えた目の前に、夜がやって来た。

 今晩はゆっくりぐっすりおやすみなさい。
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by fastfoward.koga | 2009-10-12 19:23 | 一日一言