言霊の幸わう国

秋模様

 昨日の夕方から降り始めた雨は、時折窓に打ち付けるように激しさを増し、朝になっても雨脚を緩めることはなかった。
 仕事に行くときよりはずっと遅い通勤ラッシュに巻き込まれながら、今日は茶の湯のスクーリングに出かけていった。

 案内された畳敷きの部屋は初めは寒さを感じなかったのに、正午少し前から急に肌寒さを感じた。
 朝の気温はさほど低くはなかったが、日中あまり気温が上がらなかったようだ。
 紺色の着物で正座する姿が絵になる先生の「ほんとほんと」という口癖の合間に、雨の強弱と鳥のさえずりを聞いていた。
 窓の外には色づき始めている赤い葉がちらりと見え、同じく烏丸通の銀杏も葉を黄色くし、思ったより秋が深まりつつあることを感じていた。

 午前中は濃茶を点ててもらい、昼からは一般公開されていない茶室を拝観した。
 350年以上前に建てられたその狭い空間には灯りなどなく、まだ雨の止まない薄い光だけを頼りに周囲を探っていたせいで、外に出たときは重い空ですら広がりを感じた。
 それでもそこを疎んだわけではない。
 不思議と狭さに心地よさを感じ、不謹慎ながらその由緒正しき場所で、にじり口から射し込むこの明かりで充分だから寝転がって本でも読みたいと思ってしまった。

 また別の茶室では、ほのかにいい香りがしてきた。
 てっきり隣にいる人から漂うお香の香りかと思っていたら、庭の銀木犀だった。
 少し前までは落ちた銀杏の匂いがすごかったとそこの人が言うので、にじり口から覗いてみると、名残のようにひとつだけ銀杏の実がぽつりと落ちていた。

 暗がりにひんやりする空気が吹き込んでくる中、冬に雪が降ったからと茶席を催すことがあると説明を受け、思わず想像して身震いしたらみなに笑われた。
 でも季節感を感じる大切さをくり返し説かれ、自分が明日からどんな季節の移り変わりに気づけるのだろうと思いを巡らせた。
 
 最後はふたりひと組で薄茶を点て合い、一服して、今日の授業は終了。
 慣れない正座と茶せんの扱いで、うちに着いたら全部の感覚をシャットダウンしたくなるくらい疲れていた。
 でも今日の場所は、自分の記憶と感覚の抽斗の奥にあるものと繋がっている気がする。

 まだまだ自分の中にあるものでも、未知のものがあるようだ。
 今日はタイムスリップしたような、おもしろい1日だった。
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by fastfoward.koga | 2009-11-11 20:36 | 一日一言