言霊の幸わう国

本日快晴なり

 今朝は、『シャツを洗えば』をリピートで聴いていた。

 起きたときから感じていた寒さをどうしたものかと思案しながら、「radio crazy」に出かける支度をした。
 洋服を着替えては耳を傾け、化粧をしながら耳を傾け、ベッドを整えながら耳を傾け、その何度目かでこの曲はなんていい曲なのかと感嘆のため息が洩れた。
 そして、思考はそのまま、今年はいい1年だったと続いた。
 それは、終わりよければすべてよし的な良さではなく、末吉から始まったこの1年をざざっと本のページを捲るように思い出して、よし、と頷ける自分がいる。
 もちろんすべてが満点ではない。
 でも、いつになくいい1年だったと思えることが、頷きに繋がる。
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 今日の空は、青空。
 雲は低い位置に少しあるだけで、高く見上げると空はキリのない青い色をしていた。
 今日はその空に、何度も見惚れた。
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 この数日、小粒な思考に捕らわれて言葉がうまく出なかった。
 ひとつひとつは別々のところから湧き出てきたのに、考え出すと数珠繋ぎになり、切れ目が見つけられずに手離すこともできずに握り締めたままでいた。
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 会場のインテックス大阪に到着すると、すでにそこは人でごった返していた。
 でもその人の多さが逆にテンションを上げ、K嬢とすぐにandymoriの出るステージに向った。
 くるりの『鶏びゅーと』で『ロックンロール』を歌っていたので、どんなバンドなのか気になって足を運んだが、とても若くてかわいい男の子がボーカルだった。
 1曲目と途中のスローな曲と、最後の曲がよかった。
 大画面に映る顔を見て、何度もかわいいなあ、若いなあと呟いた。
 あとで物販を覗いたとき1番新しいセカンドアルバムがあれば買ってもいいと思っていたけれど、残念ながらそのアルバムだけが置いていなかった。
 もう1度、聴いてみたい。
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 最近よく、小説家になりたかったなと思う。
 生まれ変わってまでは思わないが、その才能があればと、電車の中からいつもの風景が流れてゆくときや、ホームで電車を待っているときなどにふと過ぎる。
 夢を見るのはいいことだし、それを実現しようと努力することも大切だけれど、36になって叶わないとわかっている夢を見るのはそれはまたそれでいいなと思うようになった。
 今でも死ぬまでに1冊でいいから自分の書いたものが本にできれば、と考えてはいる。
 けれどそれが実現できなくても絶望したりしない。
 それが、10代や20代とは違っているような気がする。
 大人は、歳を重ねれば重ねるほど、答えがひとつでなくてもいいと思えるようになるので、ほんとうに楽しい。
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 今年見納めのくるりは、予定を15分ほどオーバーして登場。
 岸田くんは白黒のギンガムチェックのシャツに黒縁メガネ。
 髪は最近切ったようで、まゆげの上で直線に近いラインを描いていた。
『ワンダーフォーゲル』で始まり、会場が盛り上がったところで『・・・(忘れてしまった)』、『ベベブ』、『ばらの花』、『魂のゆくえ』と続き、今朝願掛けしていた『シャツを洗えば』。
 最後は『太陽のブルース』だった。
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 何日くらい前からか、またよく夢を見るようになっている。
 頭の中に思考の粒がいくつもあるくらいだから、それは自分で納得済み。
 答えがすぐに出ない考え事を続けているときに夢を見るのは、いつものことだ。
 ただよく見る夢が身体的な変化が多いので、単純に老いへの恐怖か、と己を笑い飛ばしてみたりする。
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 くるりが終わったあと、大急ぎで隣の会場へ移動。
 みな考えることは同じで、長く太いユニコーンへの列が寒空の下にできた。
 今日のユニコーン兄さんたちは白いつなぎで登場。
 のっけから会場全体をさらってゆくところは、圧巻。さすが大御所と、民生兄さんのMCでも舌を巻いた。
 どんな曲をやるのかと思っていたら、青春時代を共に過ごしたわたしたちも、再結成が新しい世代も楽しめるセットリストだった。
『服部』、『ペケペケ』、『オッサンマーチ』、『半世紀少年』と続き、『WAO!』、『大迷惑』、『すばらしい日々』、そして最後は『HELLO』。
 今日はやけに『HELLO』の歌詞が身に沁みて、後ろのほうで見ていても、ステージからの溢れんばかりのパワーにやられてしまった。
 アンコールは、この時期にはまる『雪が降る町』。
 余韻に浸りながら、キンと冷えた空気の中、煌々と照る月の下、終電を気にしながら帰路へと急いだ。
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 帰りの電車の中で、今日のことを言葉に連ねていた。
 体が冷えて後頭部から首筋にかけてだるい重さを感じていたけれど、今日書けるか、今日書くか、明日書いたほうがいいか、今日書いたほうがいいのか、それも考えていた。
    ***
 今日のイベントには、フジファブリックが出演する予定だった。
 キャンセルがHPに掲載され、どうなるのかとずっと気にかかっていた。
 12月6日にみやこ音楽祭で初めてステージを見たけれど、掴みどころがなくするっと逃げられてしまったのでもう1回見たい、もう1回次見られる、と思っていた。
 だから今日は、タイムテーブルどおりに会場に入った。
 ステージではマイクチェックが行われ、今にもなにもなかったようにステージが始まりそうだった。
 でも予定の時間に登場したのはFM802のDJで、メンバーからの要望で今日予定していたセットリストどおりに過去のライブ映像を流すとアナウンスされた。
 1曲目は『銀河』だった。
 みやこ音楽祭でも演奏されていて、来る前にyoutubeでも見ていたので唯一それだけわかった。
 大画面には明るい夏の陽射しの元で演奏しているメンバーの姿が映され、カメラが引くと稲穂が風に揺れるように人が波打っていた。
 そして、わたしの目の前でも人がうねりをつくっていた。
    ***
 岸田くんはMCで、「2009年が暮れて2010年がきます」というようなことを言った。
 当たり前なのだけれど、その言葉を奥歯で小さくキリリと噛みしめた。
「死んだりケガしたりしないように。生きてまた会いましょう」とも言っていたので、生きて会いたいとわたしも思った。
 うちに帰って冷えをとろうと湯船に浸かっているとき、亡くなった友人Nくんのことを思い出した。
 亡くなる数ヶ月前に、「僕が死んだら、コガちゃん僕の本書いてな」と彼は言っていた。
 そのときは単なる社員旅行でフロリダに行くのに飛行機に乗るだけのことだと、笑ってハイハイと返事をした。

 わたしはたぶん、しばらくの間はこうしていられるだろう。
 でもいつかはこうしてはいられなくなる日がくる。
 人が死んで、でもそれがいつとは知らず人が生きてゆくということを、自分がその背中合わせの中に挟まれていることを、わたしは覚えておかなくてはいけない。
 人生は後悔だらけで、だから明日だ今度だと思えるから、毎日を後悔のないようになんてことはできない。
 でもそばにいなくても忘れてはいけない人やその人を取り巻く思いは、忘れないようにしようと思う。
    ***
 年が変わるからといって、なにかが劇的に変化するわけではない。
 だから来年は、プチ小説家になろうという志を持つことにした。
 地球が少し傾いて自転しているように、2年ほどいつもとは違うところに比重を置いて傾き方を変えてみるのもいいだろう。
 吸収しながらそのときの今、自分が書けるだけのことを書いてゆこう。
 叶わない夢でも、飴玉みたいに自分の指をくわえて見ているだけでいるつもりはない。
 というきもちで、おかしな文章や構成でも今日はこれを書いておこうと思った。

 お天気が雨でも、雲の上は青空。
 そのもっと上にいる彼らに、合掌。
 そして、空の下にいる人に少しでも多くの幸があるように切に願う。


 来年も、みなさんとささやかでも関わりを持てたらうれしく思います。
 よいお年を!
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by fastfoward.koga | 2009-12-30 02:38 | 一日一言