言霊の幸わう国

生まれたての空気

 1週間、とにかく眠かった。
 帰りの電車では、睡眠薬の入った飲み物を誰かに飲まされて誘拐されるんじゃないかというくらい、眠かった。
 今日も、明日図書館に返却予定の参考文献を読んでしまおうと電車で開いていたけれど、気づくと右手で押さえていたはずのページがぱらぱら捲れ、あわてて目を開けて本を閉じた。

 でも、朝起きられなくて困ることはない。
 目が覚めて、今ここでもう1度目を閉じられたら幸せだろうと思うことはあっても、それを実行することはない。
 眠いな、今度いつ寝坊できるんやっけ、ときもちはうだうだしても、数秒でふとんから出られるし、支度するのものろのろしない。
 わたしにとっては二度寝の誘惑よりも、毎日決まった時間にうちを出られない恐怖のほうが勝るのだ。

 今は6時43分になったら、玄関へ向う。
 重いドアを開けると、マフラーとすでにかぶったヘルメットとの間にその日それぞれの冷たい空気が触れる。
 最近エンジンのかかりがよくないベスパに跨るまでに、その寒さに体をなじませておく。
 今日は大丈夫かも、と思っても、走り出したとたんに予想が覆されてうおおっと叫んだりする。

 でも、朝陽に向って走るのはきもちがいい。
 しだいにしのび寄るキンキンの寒さに身震いしても、空気が生まれたてに感じる。
 空が晴れているとその思いはさらに増し、信号待ちでその青さに見とれたりする。

 毎日同じ時間に同じ道を走る。
 飽きるほど見てきた景色でも、そこにあるのは同じ空気ではない。
 同じことと違うこと。
 その両方に、朝から救われる。

 冬の朝は、いい。
 寒ければ寒いほど、冬に感謝したくなる。
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by fastfoward.koga | 2010-01-22 23:29 | 一日一言 | Comments(0)