言霊の幸わう国

嘘をつく

 そわそわしている。
 誰かと一緒にいると話題を探して、今日のこと、昨日のこと、一昨日のことを頭の中に巡らす。
 でも相手に話すにふさわしい話題は見つけられず、目の前にあるなんてことないことを口にする。

 仕事中、小さな声で歌を歌っている。
 ハナウタより少しスケールが大きい感じ。
 隣の席の課長にも、前に座っている先輩にも聞こえていないけれど、間違いなく声に出して歌っている。
 でも右手にマウスを握り締め、ハナウタを歌いながらなんてことなく仕事をしている自分をほんの少しすごいなと思う。
 こんなところに集中力があるとは。

 胸の中には確実に数日前までなかったものがあり、でもそれはまだ形になっていないような、煙すらでもないような、水分でもないし、ただ気配だけを感じている。
 ぼやんとしたそれは、見ようとしても見ることはできず、動物園の空っぽの檻みたいにそこに存在する条件だけがきれいに並べられている。

 誰かと一緒にいたいような、いなくてもいいような。
 話したいことがあるような、ないような。
 泣きたいようで、強くなりたいような。
 そういうひとつひとつを秘密にしておきたくて、でも大声で言ってみたい気もする。

 恋をしたときのようだ。
 ベスパをガレージに入れているときにそう思った。
 
 あーあー、そうだったらよかったのに。
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by fastfoward.koga | 2010-02-22 21:09 | 一日一言