言霊の幸わう国

耳鳴り

 耳鳴りがしている。
 気がついたときには、もうこれはすごい耳鳴りになるとわかるぐらいにまでなっていた。

 初めて見るandymoriのライブ。
 久しぶりに足を踏み入れる心斎橋クラブクアトロ。
 おそらく始まったのは19時ジャスト。
 あっけない登場に、思わず口元を両手で覆った。
 1曲目は『ファンファーレと熱狂』。
 永遠に続くかと思われるほど部屋でアルバムを聴いていたけれど、それと変わらない声と音。
 おもしろくなってきたと、カウンターに肘をつきながらわくわくした。

 きもちのいいほど若さでぐいぐい押す音。
 勢いだけでもっていく。
 でも、それがいやじゃない。
 自分を大きくも小さくもしようとしていない音が、そう感じさせるのだ。
 奏でたまんまの音。
 ちょっと高見にいるわたしは、何度か笑みが洩れた。

 ボーカル壮平の声は、初め筒状の柱のように伸びた。
 目を閉じて、ぐさりと突き刺さるようだともう1度間違いないか確かめた。
 それが途中、筒が実は丸めた白い画用紙だったように広がった。
 でもまだ硬い。
 乗り出すと、端でしゅっと切られてしまいそうだった。
 
 andymoriの曲は、どれも短い。
 その曲をいくつもいくつも詰め込んで、ライブ本編は1時間15分ほどで終了した。
 1回目のアンコールでは、『鶏びゅーと』に収められていたくるりの『ロックンロール』を披露。
 何度となく聴いた耳馴染みのある曲だとか、岸田くんが作った曲だからというのではなく、andymoriがやるからこその『ロックンロール』のよさに胸が弾んだ。

 それ以降だっただろうか。
 3人がぐぐっと集中しているステージから、音が洪水のように押し寄せてきた。
 ライブハウスの人影は確かに見えているのに、中洲にひとり取り残されたように轟音とともに流れてゆく音の中でぽつりと立ち尽くしていた。
 壮平は、喉から声を絞り出す。
 それを途切れはしないかと、ひやひやしながら聴いていた。
 でも、つぶれることはない。高音はよく伸び、想像以上に力強い。
 平気なもんだと思いながらも、何度もひやひやする。
 伸びた前髪のせいで彼の表情はよくわからなかったけれど、ギターを弾きながら頭を振ったいくつかの瞬間に伏し目がちの目がパッと開かれたときには、どきりとした。
 左に頭を傾けるせいか、何度もこちらを見るから、またどきり。
 あー、持ってかれちゃうなあ、11も下なのに悔しいなあと思った。

 2回目のアンコールが終わるころには、ライブが始まる前に飲んだちょっぴりのビールなんて吹っ飛んで、仕切り直して浴びるほどビールが飲みたくなった。
 でも寄り道はせず、まっすぐ地下鉄へ向かった。
 大阪でぐずぐずしていると、帰りそびれてしまいそうな気がした。

 帰りの電車ではアナウンスが聞こえないくらいの耳鳴り。
 うちに着いても話しかけるハハの問いには上の空で、自然と無口になった。

 今晩は、耳鳴りと共に眠る。
 夢を見るとしたら、溺れる夢だろう。
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by fastfoward.koga | 2010-04-08 23:40 | 一日一言 | Comments(0)