言霊の幸わう国

爪を噛む

 周囲から卑しいと思われたくないし、自分を卑しいと思いたくない。
 そういうきもちが強すぎて、ほしいものがほしいと言えないことがある。
 ほんとうにほしいと思っているときほど、なんでもないような顔をしてしまう。
 でもそれこそが、卑しい。

 新しいなにかに出会うと、新鮮さから飛びつきたくなる。
 その飛びつきかたを省みて、自分でまるで馴染んだものに価値がないみたいじゃないかと声を上げる。
 でも生活にマンネリはつきもので、新しいものに心が惹かれても咎めるようなことじゃない。
 ただ加減が難しくて、やりすぎても遠慮しすぎても、そこに自分の卑しさを見る。

 喜怒哀楽の感情を波が引くようにパッと出して消してしまう。
 もしくは、川の流れのように穏やかな気質を持つ。
 どちらにもなれなくて、日々の小さなイライラに窒息しそうになる。

 人当たりがいいふうに装って、実はお腹の中では黒々。
 固定概念や規則、色メガネ、疑心暗鬼の詰まった鍋がぐつぐつ煮えている。
 もっとゆったりした、許せる人間になりたいと思う。
 その一方で、自分に許し続けるだけの器がないことに肩を落とし、それ以上のものになろうとはしない。

 そんなことをぐるぐる考えていたら、気づくと右手の爪を唇の上にのせていた。
 あとひと息で、噛みしめてしいそうだった。
 
 素直になれない自分は、この上なく下卑ている。 
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by fastfoward.koga | 2010-04-15 21:05 | 一日一言