言霊の幸わう国

文芸的な、余りに文芸的な日

 金曜日。
 待ちに待った『1Q84 BOOK3』の発売日。
 くさくさするミーティングも、じとっとする見合い話も脇によけ、22時前から読み始める。
 いつもより丁寧に文字を追うよう心がけ、さすがに今晩で読みきれないなとお風呂に入り、日付が変わったころ、一旦本を閉じた。

 土曜日。
 続きが気になりながらも、時間はあると、出かける支度。
 いくつも課題に手をつけようと思いながらも、材料が揃わず書き出せなかったので、今日は大学の図書館へ。
 館内は思ったほど人はおらず、真上でする工事の音が余計に響いた。
 それでも、そこは心地よい。
 初めは久しぶりの訪問に気分よくしていたものの、目当ての文献を思うように見つけられず、怖ろしく要領悪く動き回った。
 1時間ほどしてトイレに行こうとカバンだけ持って外に出て、時計を見ると13時。
 のんびりしていると学食が終わってしまう~と、そのまま昼食。
 帰ってくると、冬物のグリーンのコートがおとなしくイスにかかって待っていた。

 いくつか参考文献を探そうとメモを持参していったけれど、結局借りたのは谷崎潤一郎と芥川龍之介関連のものだけ。
 一九二七年(昭和二年)に『改造』に掲載された「話のない小説」論争について書くレポートのためなのだが、卒論のことなど考え出したら横道にそれてしまい、頭が収集がつかないと数冊借りてきた。
 小説に「話(の筋)」は必要か否か。
 そんなことを考えているときに、「物語」にこだわる村上春樹を読むとはなんの因果か、と帰ってきて再び『BOOK3』を開いた。

 だいたいにおいて本を読んでも集中力がなく、じいっとして読んでられないのが常なのに、今日はあまり姿勢を変えたりせず読み進められた。
 半分くらい読んだころだろうか、ふと「牛河」に感情移入していることに驚いた。
 なぜゆえ「牛河」。されど「牛河」。
『BOOK3』では「牛河」がいればこそ、と驚きはそっと胸にしまい、立ち止まらずに文字を追った。
 
 音楽も鳴らさず、もちろんテレビもつけず、部屋はシンとしている。
 遠くで早寝したチチのいびきが聞こえ、その音を無意識に排除すると、今度は雨が降っている音が聞こえた。
 実際にはそれは空耳で、窓を開けて確認したが、雨など一滴も降っていなかった。
 時計の秒針と、川沿いの木々の葉が風に揺られている音が重なってそう聞こえたようだ。
 
 ときどき水分補給しながら、4時間と少しで読み終わった。
 いつもよりは遅いかもしれない。
 終盤、物語の波に飲まれそうになり、怖くて本をクッションの上において手を離して読んだ。
 どんなエンディングが待っているのかドキドキしながらページを捲っている最中、ありえないと1度視線を上げた。
 話の展開についてではなく、この物語を読んでいる今の自分の状況がこの世のものとは思えなかった。

 なんという物語に、なんという文芸の世界に、足を踏み込んでしまったのか。
 ひとり目の前のごちゃごちゃした自分の部屋という現実の世界を見ながらも、頭はどこか違うところへ飛んでいってしまった。
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by fastfoward.koga | 2010-04-18 00:23 | 一日一言 | Comments(4)
Commented by cool-october2007 at 2010-04-21 21:19
僕も本日読了しました。
BOOK4が存在するんですかねぇ!?

僕はタマルが一番感情移入できましたよ。
Commented by fastfoward.koga at 2010-04-22 12:41
coolさん、こんにちは。
書こうと思えば、書けますよね、続編。
でも青豆と天吾の話としては、あれで完結でいいように思います。
リトルピープル、としては別ですけど。

coolさんが「タマル」に1番感情移入できたというのは、納得です。
彼に関しては容姿や声など、すごく想像しながら読みました。
Commented by ainekun at 2010-04-25 21:46 x
kogaさん お久しぶりです^^
私も、読み終わりました。
天吾が、今がちょうどその時期だったんだよ。どちらにとっても。。。。ていう
この言葉が、残ってます。
最近、タイミングという言葉にすごくひっかかるので。。。
タマルのイメージは、私のなかでは、”犬とオオカミの時間”に出てくる敵のヤクザの片腕の無口だけど腕のたつジラフ役のひとです(ってマニアックすぎてわかんないですよね。)(笑
ちょっと時が過ぎたら、もう一度はじめから読んでみようかなって。思ってます。
Commented by fastfoward.koga at 2010-04-27 21:21
ainekunさん、こんばんは。
わたしもBOOK3を読むときに、1から読み直しておくんだったとちょっと思いました。
この先、天吾と青豆がどうなるかは書かれていませんが、読んだあとは光が射したような気がして、読んでいた自分が救われたような気がしました。

『犬とオオカミの時間』ですね。
覚えておきますー。