言霊の幸わう国

鹿児島スリーデイズシックスストーリーズ ―機上の人

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 朝4時半に起きて支度をして、空港へ行って、ロビーで朝食のベーグルを食べて、飛行機に乗って、離陸してしばらくしたとき、飛行機に乗るのは久しぶりだと思った。
 小さな窓から見える景色は、本城直季氏の『small planet』みたいで、西へと向う景色をほんの少し楽しんだあと、はたと、そういえば昨年の12月に行った香港と沖縄も飛行機だったと思い出した。
 たぶんあのときは関空発着で、伊丹空港から旅立つのが久しぶりだったからそう勘違いしたのだろう。

 機内では、読みかけのガイドブックを読んでいた。
 ときどきキリのいいところでページから目を離し、外を見る。
 もうどのあたりを飛んでいるかわからない。
 少し雲がかかり真下の景色は窺えないけれど、真横には並走するようにちぎれた雲が浮かんでいた。
 怖いぐらい透き通った青い空に、柔らかそうに見えない妙に立体感のあるごわごわした雲。
 それは岩石や塵が浮かぶ宇宙さながらの景色で、たぶん宇宙飛行士の山崎直子さんのニュースが刷り込まれていたからそんなことをイメージしたのだ。
 いつもならそんな壮大なものは思いつかない。
 でも、この空も宇宙に繋がっているのだと考えると、あながちおかしくはないのか。
 そう納得して、射し込む陽射しが寝ている隣の人に当たらないように、ブラインドを少し下げガイドブックに視線を戻した。

 手にしたガイドブックはできるだけ事前に目を通しておきたかったけれど、「間もなく着陸準備に入ります」と機内アナウンスが流れたあたりで、数分目を閉じた。
 ほんの僅かでもそうしたことで、靄のかかっていた頭はスッキリした。

 また外が気になって、再び窓から下を覗き込む。
 山の稜線がきれいに見え、やっぱり今日の景色は『small planet』みたいだと思う。
 高度がだんだん下がってきたあたりで、桜島が見えたことに気づいた。
 その姿に見惚れていると隣の席の男の子に声をかけられ、いくつか言葉を交わしたあとに「あれが桜島ですよ」と言われた。
 知っているとも言うわけにいかず、あぁとかはぁとかいい加減な返しをした。

 飛行機は滑らかに飛び立ち、滑らかに下り立つ。
 ここまで大げさなことはなにひとつなく、淡々と時間が過ぎ、自分も移動した。
 旅慣れて旅の高揚感がないのではない、とそこは確信的に感じている。
 でも目的地に辿り着いたそのときも、まだいつもと違う旅の感覚を体の中に感じていた。

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by fastfoward.koga | 2010-04-29 11:50 | 旅行けば