言霊の幸わう国

深夜列車

「くるり詩集」を買った帰り道、市営地下鉄の最終電車でぺージを開いた。
 歌詞カードと同じ言葉が並んでいるのに、その言葉のひとつひとつに、書籍になる意味を知った。
 大き目の文字にページの余白。
 頭の中でメロディをつけて、読んだ。
 アルコールも背中をぐいぐい後押しし、胸にじんとくる。

 久しぶりに残業せず会社を出た日、シートに腰かけてから、ずっと開いた雑誌に目を落としていた。
 主要ページを読み終えて顔を上げ、初めてそこで車内の静けさに気がついた。
 車内は、シートがすべて埋まり、立っている人がまばら。
 だというのに、平日の終電近い普通電車のように誰ひとり音を立てず、気配すら消している。

 周囲をしばらく観察したあと、自然に閉じた雑誌をまた開いた。
 心地よい揺れの中で文字を追う。
 自分の部屋にいるようで、落ち着いた空気に包まれていた。
 
 こういうことは、たまにある。
 たまにあると、旅に出たいなと思う。
 旅がしたくてしたくて、たまらない。
 暗くてどこを走っているかわからない町を、走る列車に乗りたい。 
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by fastfoward.koga | 2010-05-23 19:45 | 一日一言 | Comments(0)