言霊の幸わう国

セロファンの空から降る雨

 先週最後の置き傘をさしてうちに帰ったので、微妙なお天気の今日、傘を持って歩いても違和感はないとその傘を握りしめて出勤した。
 どうしても置き傘を置き傘たる存在にしておきたいと、退社時刻の少し前から降り出した雨がひゅっと止んだ瞬間を逃さず、手ぶらで足早に駅に向った。
 入口間近でぽつりぽつり落ちてきた大粒の雨の中を走り、セーフと心の中でつぶやきながら電車に乗る。

 けれど、大阪と京都の県境あたりだった。
 音に反応して本に落としていた視線を外に向けると、窓には走り書きしたような雨の跡。
 あれよあれよという間に、外はどしゃぶりの景色に変わった。
 それでも、ずーっとずーっと西の空には雲の切れ間から太陽の光。

 期待をしながら電車を乗り換えたけれど、20分ほどの乗車時間で小雨になったり、どしゃ降りになったりと空は忙しい。
 最寄り駅では、ホームの端で雨が踊っている。
 問題はバイク置き場までの数100メートルなのだ。
 そこさえ切り抜ければ、あとはカッパを羽織ってベスパに跨るだけ。
 でもそこすら遠く感じる雨の強さ。
 雨宿り、する? しない? と、とりあえず濡れずに入れるスーパーで買いもしない棚の間を10分ほどうろついたけれど、こういうときに我慢ができる性格ではない。
 これで外に出たら、どれだけ降っていようと走れ走れー。
 そのとおり走ってバイク置き場まで辿り着いた。
 きっとあと10分待てば、気にならないくらいの雨になった。
 でも駆けた体の軽さが心地よく、濡れてもどこか清々しい。
 横断歩道前の医院の軒下でも、視線はすっと上を向いた。

 ベスパに乗ってからは、西の空の明るさが際立った。
 微妙な色で、あれは何色というのかと考えていた。
 オレンジと紫を混ぜたような感じ、いや混じってない。
 道を左折して体の正面が西向きになったところで、正体がわかった。
 後ろはオレンジの空の色、前はグレーの雨雲が後ろの陽の光を透かしていて、そんなふうに見えたのだ。
 2枚のセロファンを重ねた空から降る雨はさらっと肌を撫で、うちに辿りつくころには止んでしまった。 
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by fastfoward.koga | 2010-07-15 21:15 | 一日一言 | Comments(0)