言霊の幸わう国

「週末は甲府にいます」  ~石段上って身延山

 すっかりご無沙汰してしまいましたが、前回はこちらまで書いてました。 → ★★★


 バスを降りて、宿からのお迎えの車に乗り換えるころは気にならなかった雨も、宿の露天風呂に入ると頭の上に落ちてくる雫が気になった。
 明日の天気はいかがなものかと気にしながらも、夕飯を食べてまた温泉に入って、敷いてもらったおふとんにごろんとすると、わたしはすぐに睡魔が。
 旅前はなにかとばたばたしていて睡眠時間も充分とれていなかったので、この日はぷつんと糸が切れたように22時半ごろ寝てしまった。
 旅先の早寝。
 これもまた、いいものなのだ。

 翌朝、K嬢に何時まで起きていたのかと聞いてみると、結局ワールドカップの試合(確かアルゼンチン対ドイツだったか・・・)を最後までひとりで見ていたと言う。
 夕飯後1番先に眠いと言っていたのに、試合が気になったた模様。
 3人の中で1番の宵っ張りのY嬢も初めは一緒に見ていたけれど、確かにわたしが途中暑くて目が覚めたときに隣でコテンとなっていた姿を見たような。
 共に旅をするのももう何度目、という間柄なので、こういうところは自由なのだ。


 朝ごはんをさくさくっと食べたわたしたちは、荷支度を済ませると送迎バスで再び甲府駅に。
 前日の夜にどうしましょうかと相談した結果、最終日は、行きと同じ身延線に乗り、身延駅で下車して身延山久遠寺をお参りして帰ることにした。

 身延駅からはバスに乗り、終点の身延山で下車。
 そばで軽く腹ごしらえをしてからは、三門をくぐっていざ287段の菩提梯(ぼだいてい)。
 真下から見るとてっぺんが見えない、この急勾配の石段は、結構な大仕事だった。
 でもなぜか、こういう石段を見ると、やってやろうじゃないかとむらむらやる気が起きる。
 そして上りきったら、誰に向って言っているのか自分でもわからないまま、上ったでーと心の中で叫ぶ。
 わたしは、そういうことがすきなのだ。

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 それでもここは、途中石段を数えるこどもたちに抜かされたり、滝のような汗をかいたり、休み休みでないと上れなかった。
 けれど休みすぎるときもちが萎えそうで、息が落ち着いてしまう前に、こういうときこそマイペースを貫かねばとわたしはひとりどんどん上った。
 時折振り返ると、K嬢とY嬢ふたりが下のほうで休んでいる姿が見えた。
 
 果たしてどのくらいの時間がかかったのか。
 石段のてっぺんで、ひと息つくまで過ごした時間は結構あったと思う。
 高い分だけ太陽も近いけれど、空気はさわやかで、風が少し吹いても思わず顔を風上に向けた。
 こういうときはいつまでもこうしていたいなあと、少し思うのだけれど、そうしていられないせっかちな自分を知りながらも、その短いひとときが欲しくて坂や石段をわたしは上るのかもしれない。

 まずは本堂に入り、お参り。
 中でゆっくりしたいなと一旦正座をしたけれど、目指すはまだ上。
 靴を履いて、宝物館の裏手から身延山ロープウェイに乗って、山頂の奥の院に向った。

 空に雲がかかっているから期待してはいけないと思っていたけれど、案の定山頂から富士山を望むことはできなかった。
 梅雨時に来たのだからと自分を慰めるものの、雲の向こう側に頭の中にどこかで見た富士山の映像を浮かべていた。
 いつかどこかで、びっくりするような美しい富士山の姿を目にすることができたらいいなと思う。

 奥の院をお参りしたあとは、おみくじを引こう! と3人で運試し。
 いつものように、いっせいのーでーと抽斗から取り出したおみくじを引っくり返す。
 3人の真ん中で表を向けられたおみくじのふたつは、凶。
 手にしていたのは、K嬢とわたし。
 なんとなくそんな気もしてんけど、と口にはしたけれど、実際に引いてしまうときもちは沈む。
 でも、なんとなくしたそんな気というものが、やっぱり正しいような気もしていた。

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 来た道を戻り最後に三門をくぐって振り返ると、空はさっきよりもずっと青かった。
 ごつごつした石の参道も、もちろん石段も、山頂の道もみな決して歩きやすいところではなかったけれど、この時期に来るべくして来たというきもちは自分の中に生まれていた。
 いつかこういうきもちが、どこかへ繋がる。
 あのときのあれだ、と思う。
 そのための今なら、惜しみなく歩かねば。

 と、がんばったあとは自分にご褒美。
 帰りの特急から、三人三様。
 すきなビールを片手に、家路へと着いた。
  
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 おしまい。
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by fastfoward.koga | 2010-08-09 22:18 | 旅行けば