言霊の幸わう国

海あり山あり 日本列島輪切りの旅  「リュックの重み」

★7月25日(日)
 7:19 魚津駅発 ⇒(北陸本線)⇒ 9:37 直江津駅着   -直江津散策-
 10:51 直江津駅発 ⇒(信越本線) ⇒ 11:35 柏崎駅着   -柏崎散策(昼食)-
 15:22 柏崎駅発 ⇒(越後線) ⇒ 16:32 吉田駅
 16:35 吉田駅発 ⇒(弥彦線)⇒ 16:47 燕三条駅着   -ホテルチェックイン-
 19:26 燕三条駅発 ⇒(弥彦線)⇒ 19:39 吉田駅着
 19:59 吉田駅発 ⇒(弥彦線)⇒ 20:06 弥彦駅着   -弥彦散策(弥彦灯籠まつり)-
 22:26 弥彦駅発 ⇒(弥彦線)⇒ 22:50 燕三条駅着 ※臨時列車






 旅の朝は早い。
 この旅で1番の早起きをしたこの日は、6時前には起床。いつも大半は前日の夜に荷物はまとめているので、朝使うものだけをリュックに詰めれば支度は完了する。
 そのリュック。朝イチで背負った瞬間はいつも胸がきゅっとなる。詰め方や洗濯物が増えると重くなるので、その日の運勢を占うみたいに身構えるのだ。
 想像よりも重いと、駅へ向かう道すがら、背中をゆすって位置を整える。そして今日は背負う時間が長いなとか、電車に乗ってる時間のほうが長いからなとか考える。

 日曜朝の列車は、入善、泊を過ぎると予想どおりがらんとし始め、糸魚川駅で停車したときには、わたしのいた車両には誰もいなくなった。
 どのあたりから日本海が見えたか覚えていない。ボックス席をひとりで占領し、待ちに待った車窓の海に見入った。早起きしてこんな景色を列車の中から見るなんて贅沢だなあと、ひとりひそかに思っていた。
 2時間強かかって、直江津駅に到着。次の列車までは1時間以上ある。
 鉄旅ひとりルールで、1時間未満なら駅から見える範囲にしか出歩かない。1時間以上あるなら、距離を測って行ける場所を探す。直江津駅は後者だったので、リュックから取り出したガイドブックを捲り、海まで行ってみることにした。
 普通にあるけば25分くらいだったろうか。でも鉄旅中は普通でない。リュックの重さと陽射しで、予想した時間では行けないのが常だ。それをわかっているのかわかっていないのか、とりあえず行くしかないでしょうと、ここでもなにかに挑むように駅を出た。
 実際にかかった時間は確かめていない。ただいつもと変わらず、何度もリュックを揺らしたり背負いなおしたり、持参していたペットボトルの中身を一気飲みして海にようやく辿り着いた。
 姿は見えないけれど、浜辺で海水浴を楽しむ大勢の人たちの歓声が聞こえてきた。あと少しあと少しと自分を励ましながらやっと海の見えるところまでやってきたのに、きもちはしゅんと萎んでしまった。あまりにも海水浴客が多くて、水際まで行ける雰囲気ではなかったのだ。
 大きなリュックを背負い、汗だくで、足元はスニーカー。浜辺に下りたら、かなり不審だ。
 仕方がない。この季節、浜辺は海水浴をする人たちのためのものだ。ここまで来ただけでもよしとしようと、浜辺の1番高いところで砂に触れた。
 水際まで70メートルほどあるけれど、砂は驚くほど熱かった。それでも、何度も砂に手を突っ込んでは握りしめて手を開き、さらさら落ちる砂の感触を味わった。海っぽい、そう思った。

 直江津駅からは信越本線で柏崎駅へ。ここではこの旅最高の待ち時間4時間強。お昼時だしなんとか時間は潰せるだろうと高をくくっていたけれど、これが意外に苦戦。
 探して探して見つけたお寿司屋さんでお昼を食べたところまではよかったが、そのあとどうしたものかと赤坂山公園にある木村茶道美術館に行こうと駅から歩き始めたら、とたんにあまりの暑さとリュックの重さにくらくらした。いやいやそれでも行かなくては、と駅前から伸びる道を行ったものの、国道まで出て挫けてしまった。
 行くべき道は、上り坂だったのだ。
 仕方なくそばにあったミスドでしばし時間を潰し、でもやっぱりなあと駅前に戻ってバスで赤坂山公園に向った。直線で行けばすぐの場所を、バスは住宅街をこれでもかというくらいくねくね進み、辿り着いた場所はうっそうと木々が茂った公園の端っこだった。あとで地図を確認したら、行きたかった木村茶道美術館は公園の反対側。リュックの中の地図を取り出せばすんだ話を、疲労でそれさえも億劫で結局そのまま公園の遊歩道を抜けただけで駅へ戻ってしまった。
 その時点で、吉田駅行きの列車の出発時間までは1時間ほどあった。でももう充分と、改札前の大きなベンチで肩に食い込むリュックを下ろし、ひと息ついた。落ち着いたあとは早々に改札を抜け、ホームに向った。列車はすでにホームにいたけれど、乗車はできないようだった。
 日陰のベンチにいると、ホームを小学校3、4年生くらいの男の子が駆け回っている。首に高そうなカメラをぶら下げ、動くたびにポケットの小銭の音が賑やかに鳴る。駅の清掃のおばちゃんに大声で話しかけ、駅舎からゆっくり歩いてきた運転手さんにまとわりつく姿は子犬みたいだった。
「この子、貨物列車の運転手になりたいんだって。」
 清掃のおばちゃんが運転手さんにそう言うと、運転手さんは「貨物かあ」と苦笑いしていた。
 その子は列車に乗ってからも車内を走り、いったん駅舎に戻っていた清掃のおばちゃんからなにやら鉄道グッズをもらって、さらにはしゃいでいた。
 どの駅で下りるのか。そう思っていたのに、待ちわびた列車が走り出したらうとうとし、気づいたらその子はいなくなっていた。
 あれあれと車内を見回してから、窓の外を見た。そこにはもう海はなかったけれど、一面の青い稲。風になびくと、それも海に見えなくはなかった。
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     (越後線・吉田行き列車の車窓)

 吉田駅を経由し、弥彦線で宿のある燕三条駅へ。
 この日は宿のコインランドリーで洗濯をする予定だったので、16時過ぎにはチェックイン。ほんとうはそのまま夕飯だけ食べに出て、あとはゆっくりするつもりだった。
 それが、長居した柏崎駅で弥彦灯篭まつりのポスターを見つけた。日付は7月25日。
 今晩だ。
 よく見ると、臨時列車も出ると書かれている。燕三条駅までの列車や宿でコインランドリーを回しながらも思案して、よっしゃ行け行け、とやっと外が暗くなったころ、燕三条駅から再び列車に乗った。
 吉田駅で列車を乗り換えていると、時間は20時前になっていた。列車には同じように祭の弥彦へ向う人ばかり。昼間とは違うざわざわの中そわそわしていると、弥彦駅手前で遠くに花火が上がったのが見えた。
 一瞬で、しかも列車が蛇行したので、見間違えかと思った。でも耳を澄ますと、ぼんという音が聴こえた。
 わくわくしている間に列車は駅に滑り込み、待ちきれず急いで外に出た。すると駅舎を出たすぐ目の前でどかんどかんと花火が上がっている。ここは絶好のビューポイントだと、そのまま車止めに腰掛けてあんぐり夜空を見上げた。時間が気になって時計を見たら、すでに20時を過ぎている。ああ、もうあと少しで終わってしまうんだなと思った途端、空は静かになってしまった。
 とりあえず人の流れに乗っていこうと歩いた。どこへ向っているのかもわからないまま進んでいくと、道路は歩行者天国になり、屋台が出始め、人とすれ違うのも大変になってきた。
 祭はまだ続くのだろうか。そう思っていたら、今度はさっきより近い場所で花火が上がった。目を凝らすと、神社の隣にある空き地で花火は上がっているようだった。アナウンスによると、そこはテニスコートらしい。シートの上でどっかり座っている人たちは、立ち去る様子もない。まだ花火は続くのだなと、わたしも人の頭の間からゆっくりめの間隔で上がる花火を見た。
 すぐそばで上げているせいで音が近く、花火が上がるたびにいちいちびくびくした。間近に上がる花火の輪は大きく、周りの人と一緒に歓声を上げて見た。
 花火がメインではないからか突然間隔があくので、その隙間に涼しさを求めて歩き出した。大音量が名残惜しいと思いながらも、どんどんと駅から離れてゆく。少し耳が落ち着いたかと思っていたら、今度は前のほうからお囃子が聞こえ始め、曲がり角で待っていたらお神輿が次々やって来った。
 花火にお囃子、お神輿。
 あっちもこっちも、賑やかさがおさまる気配はない。時間は、21時をとうの昔に過ぎている。おさまるどころか熱気はどんどん高まっていて、笑いがこみ上げてきた。いつまでこの祭は続くのか。ひと晩中やるよと言われたら、信じてしまいそうだ。
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 臨時列車が22時台だったわけがやっとわかったと、まだまだ人が集まる場所から離れ駅へ向った。でもまだ花火は上がり続け、名残惜しく途中のベンチに腰掛けた。そこで、屋台で買ったたこ焼きをつまんでは水をごくごく飲む。
 ペットボトルのお尻を持ち上げると、ちょうどその角度で花火が見えた。
 なぜかこの夜はビールを口にせず。アルコールはなくてもいい日は、あるもんだ。
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by fastfoward.koga | 2010-08-20 23:36 | 旅行けば