言霊の幸わう国

ノスタルジア

 数ヶ月前に中学のクラブの同窓会をしたとき、わたしはそのあと何日もそのときの余韻に浸っていた。
 自分でもどうしてこんなにあのときの空気を引きずってるのかなとしばらくずっと不思議に思っていた。でも数日経ってそれも薄れてくると、理由については考えなくなってしまった。

 わたしが今まで読んだ中でベストテンに入る、マイク・ゲイルが書いた「サーティブルー」という本がある。
 ニューヨークに住むイギリス人のマイクは、30歳目前。つきあっていた彼女と別れ、もうニューヨークにはいたくないと転勤届を出し、オーストラリアに赴任することが決まった。ただし赴任は3ヶ月後。その空白の期間を故郷のバーミンガムで過ごすことにしたマイクは、そこで懐かしい面々と再会する・・・、といったお話だ。

(余談だが、「世界を離れるときにもっていく八つ」で紹介した「ベンツに乗って強盗にいこう」もそうだったが、イギリス人は30歳を迎えることに、特別な感情をもっているようだ(特に男性)。
 わたしはこの「サーティブルー」は30歳まで1年を切ったころに読んだが、マイクのようなプレッシャーを感じることもなかったので、ただただ単純にストーリーを楽しんだ。)

 それが先日、同窓会が終わってからふと手にして読んだ後、なぜ自分が余韻に浸ったのかがわかったような気がした。
 お話の中でマイクは、時間はたっぷりある! と学生時代の友人たちの消息を探し始める。中には悲しい現実が待っていたりもしたけれど、久しぶりに会った友人とはみな心から再会を喜んだ。そして、10代のころからつかず離れずだったジニーとの関係に区切りをつけようとするときに、マイクのセリフにこんな言葉が出てきた。
 それは、「ノスタルジア」。
 わたしがたどり着けなかった答えの正体は、ノスタルジアだったのだ。

 わたしは地元を離れたわけじゃないし、生活パターンも変わってないし、そんなもの今まで感じる場面がなかった。
 だから、初めてノスタルジアに浸って、この歳になったからこそ初めて感じられたんだと思った。
 ただ懐かしいと感じる思いがひとりだけじゃなく、何人もの人間の中で共通して発生したときのあの不思議感。
 長い短いは別にして、余韻に浸ったのはきっとわたしだけじゃないだろう。
 みんないい加減だから記憶はなかなか重なり合わないのに、同じ時間を大量に過ごしたという事実だけで、居心地がいいなんておかしすぎる。

 同窓会のあと、参加できなかったY嬢にメールで報告すると、こんな返事がきた。

 「やっぱさ、思春期に一緒に過ごすって
 すごいよね。
 家族になるもんね。」

 そう、懐かしさって共有できる相手がいるのといないのとでは大違い。
 しかし、わたし、こんなに大人になっちゃったのか。
[PR]
by fastfoward.koga | 2005-04-16 22:01 | 一日一言 | Comments(4)
Commented by caosoi at 2005-04-17 13:41 x
人は同じものを見ても 違うことを思ったりします。
私は「サーティブルー」好きだけど、深い思い入れはないかな。なんせ記憶がボロボロに抜け落ちてるやん私(笑)
過去に触れたりするのが苦手中の苦手。ノスタルジアに憧れます。
地図が読めないのと同じで、焦るし辛くなるんよねぇ。すっごい薄情者みたいじゃない?
Commented by fastfoward.koga at 2005-04-18 00:40
 ノスタルジアとは、記憶のあるなしはあまり関係ないかなと思います。ただ記憶が抜け落ちてしまうようだと、お話にならないけど(笑)。
 確かに学生時代のころのことはよく忘れていらっしゃるあなただけど、忘れたくないことは忘れないよ。忘れるということはそれだけの出来事だということよ。ま、それを人は薄情者と呼ぶのかしらん(爆)。
 でもわたしと歳をとる限り、思い出させてあげますわ。
Commented by caosoi at 2005-04-20 21:53 x
おおっ それは心強い。
ただ私の場合、たいして思い出したいとも思ってないってのが
問題かもなー。
薄情者で決まりやな(笑) 
Commented by fastfoward.koga at 2005-04-21 20:16
 ちょっとくらいさ、覚えててよ。薄情者~。