言霊の幸わう国

心を癒す単純作業

 ひと月ぶりにあったK氏は、なんだか表情が暗く元気がなかった。
 あまり会話もはずまなかったので彼のペースに合わせていたら、ぽつりぽつりと悩んでいることを話し始めた。
 ふんふん、と話を聞いているといくらか楽になってきたのか、彼は少し笑顔になって「最近は洗濯物を干していると癒されるねん」と言った。

 なぜ洗濯物なのか?
 わかるような、わからないような。
 なぜかその理由が知りたくて、彼に質問をしながら考えつづけた。でも答えにはたどりつけなかた。
 そこで、もし自分にも同じ感覚があるとしたらなんだろうと発想を変えてみた。
 わたしだったら、部屋の片付けがそうかなと思った。

 散らかった部屋では、きもちはくさくさする。
 仕事でイライラして帰ってくると、わ~っと着ていたものを脱ぎ散らかし、荷物を放り投げ、パソコンの電源をオンにし、テレビもつけ、雑誌や本も広げてみたりする。
 とりあえず思いつくことに手をつけて、やりきったなと思ったら、そこからいそいそと片付けを始める。
 洋服をハンガーにかけ、洗濯物を出し、鞄を定位置に戻し、本を棚に戻し、テレビの音量を下げる。そして最後に、机とベットの上をきれいにしてやっと落ち着く。ほっこりする。

 きれいずきとか掃除がすき、ではなく、わたしのは片付けずきなのだ。
 どこかどう違うのかというと、わたしは窓拭きや床のワックスがけなど、磨くことはあまりしない。少々のほこりにも我慢できる。
 きれいずきと呼ばれる人なら、きっとこういうことはないだろう。わたしはただ、ものをあるべきところに納めるのがすきなのだ。
 よくあるのは、買い物に行った店先の陳列棚の中に手を突っ込んで並べ替えたい! と思うこと。実はその欲求を抑えるのに、かなり必死になっていることがある。
 小さいときに、陳列されている消しゴムを買いもしないのに、ただ黙々ときれいに並べていたことを今でもよく覚えている。そのときは万引きに間違われないようにしなくっちゃと、子供心に思っていた。

 悩んだり、考え事をしたりするとき、単純作業はいい。
 どんなことでもコツコツとやっていると、頭の中の絡んだ糸がほぐれていって気分転換ができる。
 そのうえ、すぐ終わる単純作業なのに、終わったらわずかでも達成感が出てくるというおまけつきだ。
 おお、一石二鳥!
 
 あなたのすきな単純作業は、どんなもの?
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by fastfoward.koga | 2005-04-17 23:59 | 往復書簡