言霊の幸わう国

無制限1本勝負

 今日は大学の図書館にいた。
 昼食とトイレ、休憩以外は、ずっと机の前。
 時計は見るたび、針を270度ずつ回転させていた。

 持参したテキスト4冊に、レポートを書くためにまとめたノートを2人分の机を占領して広げる。
 そして貸し出しパソコンに、ボンボン飾りのついたUSBをセット。
 首に巻いてきたストールは膝の上に置き、腕まくりをして挑む。
 無制限1本勝負。
 11時半に始まり、休憩を3回はさんで、終わったのは19時40分。
 計8時間10分の長丁場だった。

 昨日の夜、3色ボールペンを手にして改めてテキストを捲った。
 付箋だらけで、前半部分だけが手垢で汚れ始めている。
 捲って戻って、捲って戻って。
 そうしている間に、ひとつの答えに辿りついた。
 前かがみになっている上半身は跳ね、なにもないのに思わず視線は上を向き、頭を後ろに引いた。
 人はひらめくと、マンガみたいな行動をとってしまうものなのだ。

 レポートの道筋は、出たとこ勝負だと考えなかった。
 1時間ほど昨日読んだテキストとは違うものを読み、うーんとひと唸りしたところでふわっと浮かんだ文章を記すべく、そのままキーボードを叩いた。
 時折後ろに倒れる背もたれに身を任せたり、腕を組んでみたり、あとは流れを止めないよう、ほのかに自分に祈りながら書いた。

 どこへ辿りつくのか、わかっているようなわかっていないような。
 それでも、4ページ目途中あたりまできて喉の奥がくっと詰まった。
 すかさず握りこぶしで、鼻下を押さえる。
 不覚にも、自分の書いた文章、しかもレポートで泣きそうになった。

 昨日、思っていたのだ。
 映画の予告編がCMで流れるだけでも泣きそうになるくらいなのに、こんなにも息苦しさを感じるこの状況で自分のことで泣けたりしないなと。
 いっそのこと、わーんと泣いてしまえれば楽なのかと思いながら、同じ場所にいる自分はそれを行動に移そうとしない。
 じゃあいったい自分は誰にコントロールされているのか、不思議だった。

 それでも今日、忍耐強く、レポート提出用に設定されたワードの縦書きに、書いては少し消し、書いてはまた少し消しをくり返しながら5枚目に到達したら、泣かなくてよかったと思った。
 迷う事柄など他に多々ある。
 今日の勝負も、勝った気はしない。
 それでも、レポートひとつ仕上げただけで、深呼吸のひとつでもした気になれた。
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by fastfoward.koga | 2010-10-16 22:31 | 一日一言