言霊の幸わう国

なにもないことなどない

 15日必着の卒業制作の草稿を、今日も大学の図書館で、必死になって書いていた。
 買いても書いても物足りず、きもちが引っ込んでしまいそうになったから、本棚から馴染みのある作家の小説をいくつか抜き出した。
 小説の構図を、呼び起こしたかったのだ。
 道標を胸に抱えて陣取った席に戻る途中、自分にはなにもない、という言葉が頭を過ぎった。

 なにもない、なにもない。
 呪文みたいに、頭の中でくり返した。

 でも、ほんとうはなにもないわけじゃない。
 ただ自分が期待するもの、望むもの、今胸に抱えているようなものがないと思っているだけだと、言い聞かせた。
 でなければ、自分がそれまでに書いた拙いなりの文章はいったいなんなのだ、と思ったのだ。

 そうして、今日も陽がどっぷり暮れて閉館30分前のアナウンスが流れるまで、思う存分書いた。
 指定された途中の場面を書けるほど器用じゃないから、頭の中にある物語を初めからずっと書いていった。

 ばっかじゃないの。
 途中、時間がないのに書き込む自分に突っ込んだ。

 でもいつか、役に立つだろう。
 今日の日は、いつかわたしの血となり肉となる。

 リミットは明日の昼と決めた。
 とりあえずこれを出したら、ひとヤマ越える。
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by fastfoward.koga | 2010-11-14 00:26 | 一日一言