言霊の幸わう国

ひとりでこの街を歩いていく

 友人と中華を食べて、店を出たときの寒さと言ったら。
 冷凍庫の中に入ったようだった。

 シンシンと寒さが迫りくる夜道を、友人と別れたあとひとりで歩いた。
 靴音を響かせていると、賀茂大橋にさしかかった。
 欄干から下を覗いても、鴨川デルタの形はハッキリとは見えない。
 でも川沿いの道には数台の自転車の陰が見えた気がした。
 気になって歩きながらそのまま目を凝らしていると、川へと降りる階段に人の姿が見えた。
 こんな寒空の下、あんなところにたむろするのは学生に決まっている。
 思わず、「風邪引くよー」と橋の上から声をかけたくなった。

 真っ暗の中でも流れる川の音。
 もう1度、デルタの姿を探す。
 そこでふいにくるりの『三日月』が口をついて出た。
 歩くスピードは緩めず、月を探した。
 体を捻り見上げた視線の先には、三日月ではなくふっくらした月。
 少し雲がかかっているものの、澄んだ空気の中輪郭はくっきりしている。
 その姿を確認したあと、再び「この三日月を この三日月を」と歌い直した。

 川沿いの柳は、少しでも揺れると寒さが身に沁みると言わんばかりにじいっとしている。
 
 わたしの手には友人からもらった出町ふたばの豆餅。
 軽く振りながら、駅へと急ぐ。

 そんな小さな世界で起こったことが、幸せなことだと思った。
[PR]
by fastfoward.koga | 2010-12-17 23:57 | 一日一言