言霊の幸わう国

言葉にならしまへん、笑顔を見しとくれやしまへんやろか 名古屋編

 さる1月13日(木)。
 わたしは、名古屋にいた。
 夕方から何度も左手の時計を見、K嬢とともに開演のときを待った。
 19時を過ぎた針。
 ステージ間近でもみくちゃになるよりも、段差のある場所で見晴らしよく眺めるほうがいいと離れた場所を選んだせいで、照明の落とされた舞台の上は霞んでよく見えなかった。
 何度も何度もメンバーが登場する錯覚に翻弄され、開演から10分やっとくるりとその仲間たちが現れた。

 ステージは、向って左からサポートギターのフジファブリック・総くんにさとちゃん、岸田くん、後ろにどかっとboboさん。
 やっぱりみやこ音楽祭と同じ並びで、きた。
 よっしゃよっしゃと思っていると、1曲目が始まる。
 聞き覚えはないよなあと頭の中で記憶を探っているが、岸田くんは歌わない。
 インストだった。
 新曲だろうか。
 わからないまま曲は終わり、会場から拍手が起こる。
 続いて『目玉のおやじ』、『コンバット・ダンス』、『ハヴェルカ』とテンポよく続いた。
 ギターもベースも交換せずぐーっと集中している感じが小気味良く、くっくっくと笑いが洩れる。
 そのあとの『ワンダーフォーゲル』で、会場はまたひと煮立ち。
 きたきたー! と、ステージを見るわたしの顔は緩みっぱなし。
 ツアータイトルどおり笑わされ、こっちは笑顔の安売りだ。
 でもそれ以上にステージの4人が楽しくて楽しくて仕方ないと演奏しているのが、溢れるように客席に押し寄せる。
 昨年12月のみやこ音楽祭のときも同じ空気を感じたが、パワーアップした気がするのは間違いではないはず。
 あのときは、言わば小手調べか。
 それでも舞台の上の楽しさが感じられたのだ。
 ツアーはいったいどうなるのか?
 それが、楽しみで仕方なかった。
 その期待が裏切られなかったことが、わたしはなにより楽しかった。

 そんなことをちらりちらり考えている間に、曲は『鹿児島おはら節』。
 実はこの曲、みやこ音楽祭の1曲目で、無知なわたしはくるりの新曲かと思っていた。
 至極単純で申し訳ないが、「ヨイヤサー」という合いの手が、『東京レレレのレ』の「アーヨイヨイ」とだぶったのだ。
 あー、また今日もやってる。
 そう思いながら聴き終えたところで、初めてひと息。
 岸田くんがMCで「あけましておめでとう」と言った少しズレたひと言に端を発し、話題はしばし年賀状について。
 来た人にだけ出す岸田くんと、喪中の案内を出さないまま来た人にも出さないさとちゃんという対比で笑いを誘い、続いて新曲やりまーすと、ステージは再開された。

 新曲のまず1曲目は、『旅の途中(表記不明)』。
 次が映画『まほろ駅前多田便利軒』の主題歌、『キャメル』。
 わたしは前から「キャメル」という言葉を耳にすると、舌にほろ苦い甘さを覚えていた。
 それはキャメル→キャラメル連想で、思い出していた味はと言えば、キャラメルマキアートと、ひとり小さくイメージを連ねていた。
 この曲、『キャメル』はそれがあるにしてもやっぱりどこか甘さとほろ苦さの感じる曲だった。
 映画の原作はこのときまだ読んでいなかったが、瑛太と松田龍平がふたり並んで映ったチラシを思い出し、うん、これはいい感じなはず、とひとり納得していた。

『温泉』、『FIRE』、『犬とベイビー』、『さよならアメリカ』とアルバムの曲が続き、合間のMCでは岸田くんがさとちゃんのパーマ(!)をネタにやたらいじっていた。
 初めにステージにさとちゃんが現れたとき、あれ? 寝癖か? と思っていた左耳あたりのハネはパーマだったらしく、そこは必死になって目を細めてみたものの遠くてよく見えなかったのが非常に残念だった。
 でもそのステキさ加減は、遠くても伝わる。
 特にアンコールで、「コンタクトの調子が・・・」と久々のメガネで登場したときは、最高潮にくらくらした。
 そして今回は、K嬢曰く「シュッとした」フジファブの総くんがいる。
 名古屋ではみなTシャツというラフな衣装の中、ひとりシャツのボタンを上まできっちり留めた彼の姿は、やっぱり見ずにはいられなかった。
 さとちゃんに総くん。
 このふたりが王子様然として見える一方で、右端の岸田くんはいつも以上に異彩を放っていた感あり。
 とにかく総くんと一緒に演奏できるのがうれしくて楽しくて仕方ないと、はしゃぐこどものように、総くんに挑むようにギターを弾いていたかと思うと、時にはギターを置きマイク1本を握りしめて歌う。
 相変わらず細いばねのような体を全身使って、体の奥にあるものをすべて表現しようとするかのように、ステージの上で動き回る姿。
 久々に見た気がするなあと、ここでも微笑まずにはいられなかった。

『ブレーメン』、『MORNING PAPER』と少し前の曲が続き、『アナーキー・イン・ザ・ムジーク』では、間に『言葉はさんかく こころは四角』や『街』をワンフレーズだけ歌って観客を煽ったり、ソロバトルがあったり、とにかく長かった。
 でももっと続いてもおもしろいのに、と思うくらい、胸が沸き立つものがあった。
 最後は、『東京レレレのレ』で締めくくられ、本編終了。
 時間はもちろん空腹も忘れるくらいの勢いがあり、そんなわけはないが、ずっと息を止めていたことに気づいたように、そこで思わずほおっと息を吐いた。

 アンコール前には恒例の、さとちゃんの物販紹介。
 途中で岸田くんが乱入し、ここでもテンション高め。
 いやいや、ほんまどーしたん? と顔を覗き込みたくなるほどのテンションのまま、アンコールに突入。
 でも曲は決めてないと岸田くんが言うもんだから、会場からは次々リクエストが飛び交った。
 あちこちから聴こえるタイトルに、くーっ、渋いとこ突いてくるなあとか、わたしもそれ聴きたいなどと、目を輝かせていると、ステージではメンバー4人のこそこそ話が始まった。
 アンコール1曲目は、隣にいるK嬢が帰り道、今まで見たくるりのライブでは100%の演奏率だと言った『ばらの花』。
 そのあと「アルバムのツアーですけどやってないので」と、『麦茶』と『魔法のじゅうたん』。
 そしてわたしのすきな『ロックンロール』。
 最後は『HOW TO GO』。
 
 終わってみればなんらいつもと変わらない2時間と少しの時間だったのに、この日は今まで1番短く感じた。
 帰りの新幹線の時間を気にし始めたのは客電がついてからで、楽しかった! と、あぁもう1回ライブハウスでこのツアーのライブを見たい、そう思った思いを帰り道では噛みしめた。

 と、今度は違う期待を胸に、3月武道館へ。
 みやこ音楽祭も、名古屋ダイアモンドホールとも違うキャパで、このメンバーがどんなライブを見せてくれるのか。
 できるなら、みやこ音楽祭で聴いた『愛なき世界』をもう1度聴きたい。
 期待と楽しみはもうひとつ、まだ続く。
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by fastfoward.koga | 2011-01-28 20:58 | 一日一言 | Comments(0)