言霊の幸わう国

しくしく

 朝から珍しくこってりしたパンを食べたら、会社に着いたとたん胃が痛くなった。
 しくしく、しくしく。
 パソコンの前に座っていても、何度か体を折ってデスクにつっぷした。
 しばらく思案して、結局胃薬を飲んだ。
 30分もすると痛みはおさまり、昼食は普通に食べられた。

 今日は少しだけ残業しようと居残りしていたら、また胃が痛み出した。
 朝と同じ。
 しくしく、しくしく。
 お腹の中から音が聞こえてきそうだった。
 仕事を片付け駅へ向かう間も痛みは続き、シートに腰かけたら自然と目を閉じ額を指で支えていた。
 あぁ今自分はこういうポーズをとりたくなるような気分なんだ、と思った。
 
 午後、部長に呼ばれた。
 場所がいつもの打ち合わせのデスクではなかったので、共に声をかけられた先輩と視線を合わせた。
 なに、なに、と心の中でつぶやいて席に着くと、切り出されたのは主査の退職についてだった。
 早ければ2月と言われていたままでそのあと話題にものぼらなかったから、先輩と密かに立ち消えになったんじゃ、と期待していた。
 そんなわけないよなあ。
 きっと先輩も同じことを思っていただろう。
 以前愚痴をこぼしたうちの課長も先月から病気休暇を取っていて、たとえ戻ってきても、いや戻ってきたらもっと前途多難だ。
 主査がいない担当で、果たして課長はうまくやっていけるだろうか。
 
 目を開き、先週から読み続けているモーパッサンの短編集にきもちが集中し始めると痛みはおさまった。
 揺れる電車の中で、さっきまで感じていたしくしくはなにから来ているのか、考えていた。
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by fastfoward.koga | 2011-02-21 21:51 | 一日一言 | Comments(2)
Commented by tabikiti at 2011-02-23 19:11
モーパッサンの短編集は胃痛に効くのよね~^^
Commented by fastfoward.koga at 2011-02-23 21:34
太美吉さん、こんばんは。
大学の先生曰く、「ちょっと俗っぽい」というモーパッサンですが、おもしろかったです。
もしかするとオチのつけかたが、関西人好みなのかもしれません(笑)。