言霊の幸わう国

長い長い夜

 ごぼうを切っているときに、電話は鳴った。
 その電話を切ったあと、涙をこらえられないまま友人ふたりに続けて今耳に入ったことを伝え、そのあとぼんやり過ごした。
 気づくと背は丸まり、自然に頭はたれた。
 陽はどんどん傾き、事実関係を確認しようと開いていたPCのディスプレイの灯りだけが自分を照らした。
 ふいに次の連絡があるまで、いつくるかわからない電話を待ってこうしていることに恐怖を感じた。
 灯りをつけ、カーテンを閉め、台所に戻りごぼうを切り始めた。
 もともと低い流し台に向かい、必要以上に背を丸めていることにまた気づいた。

 どうしてこういう出来事は、暖かくない季節ばかりに起こるのだろう。
 電話をかけた友人に、同じような電話をするのは3度目だった。
 そう指摘されて、目の前に一瞬で闇が広がった。

 今朝友人が亡くなった。
 どうして悲しいことは、こんなふうに、しのび寄るようにやってくるのか。

 携帯の調子が悪くなったのは、廊下にばらまかれた消火器の跡を踏んだのは、怖いくらいに眠ったのは。
 どこかに暗示らしきものがなかったか、昨日から今日にかけての出来事をリプレイした。
 今さらサインを見つけても、うれしくともなんともないというのに。

 これから、仕事終わりの友人がうちに帰ったころ、この出来事を伝えなければならない。
 これを書く以外の時間、わたしはじっとカーテンを見ている。
 描かれた模様とドレープの輪郭を、視線で何度も何度も何度もなぞっている。

 夜が、長い。
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by fastfoward.koga | 2011-03-27 23:39 | 一日一言