言霊の幸わう国

鈍色の海

 10日ほど前だろうか。
 4月に提出していた卒業研究の添削が返ってきた。
 まだ物語の途中までしか書かれていない小説。
 その先を書くために土曜の朝京都を発ち、出雲に行ってきた。

 見たかった島根の鈍色の海。
 にびいろ、にびいろと、主人公と同じように口の中で唱えながら出雲の日御碕に立った。
 昨晩降った雨は朝にはやんでいたけれど、沖にはまだ重く沈んだ雲が見えた。
 
 柵がないので、大丈夫そうなところまで海に近づいた。
 うみねこが飛ぶ姿は、飛べない人が見るせいか、きもちよそうだった。
 目を閉じると波が岩にぶつかる音と、うみねこの鳴き声が遠くに聴こえた。
 風に体温を奪い去られる前まで、ずっとそうして立っていた。

 来てよかった。
 思わず口をついた言葉は、すぐに風に乗って消えた。
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by fastfoward.koga | 2011-05-22 23:12 | 一日一言