言霊の幸わう国

金木犀

 住宅街の坂道で、焼き魚の匂いを鼻先で感知した。
 それまで土日のスケジュールをずっと考えていた思考が、夕飯どうしようか、に変わった。
 
 そこから数メートル歩く。
 車がきたので避けた拍子の足を、思わず半歩戻した。
 暗がりの民家の塀を一瞬だが、じっと見つめる。
 そこには探していた香り。
 橙の小さな花。

 角を曲がってもついてくる香り。
 そこにカレーの匂いが混じる。
 でもそれも束の間、鼻先には甘く重い秋の香りが戻ってくる。
 
 誰よりも早く気づいたという自負。
 どうして金木犀に気づくと、こんなにうれしいのか。

 秋は、もう、すぐそばにいた。
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by fastfoward.koga | 2011-09-30 21:06 | 一日一言