言霊の幸わう国

6月の巻

1 小川洋子   密やかな結晶・講談社文庫  
2 堀江敏幸   燃焼のための習作・講談社    
3 村上春樹   世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)・新潮社文庫 ※ 

 6月は、記憶にまつわる物語ばかり読みました。
 中旬に参加したイベントでも、「記憶に残る旅」について書いたりもしていたので、おそらく無意識に「記憶」をキーワードに暮らしていたのかもしれません。
 
 そう言えば、イベントの中でこんなことを言っていた人がいました。
「わたしにとって『記憶に残る旅』と『心に残る旅』は違っていて・・・」
 そこでその場は、賛同するような空気になりました。
「『記憶に残る旅』は、きっとこっちなんだと思います」
 そう言って、彼女は頭を指さしました。
 
 けれどわたしは、違います。
 わたしにとって「心に残る」は「印象に残る」と同義で、そこに重さはありません。
 けれど「記憶に残る」ものは、そこに自分の感情や感覚が伴っているので、お腹の中にぐんと沈み込むものもあります。  

 人は記憶まみれで生きている。
 というより、人は記憶でできている。

 わたしは、そう思うのです。

 堀江敏幸の『燃焼のための習作』は、わたしがいつも考える思考のスパイラルについて描かれています。
 会話から生み出される、いや開き続ける記憶の抽斗。
 誰かの言葉から思い出しては紡がれる話の数々。
 わたしは数日かけて読みましたが、この作品は一気に読むことをおススメします。
 そうすれば、物語の中で会話に参加しているような気になれるはずです。
 ぜひ、ご一読を。
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by fastfoward.koga | 2012-07-14 22:45 | 本の虫