言霊の幸わう国

意思と石

 今部屋は、日に日にダンボールに占拠されている。
 荷物の詰め始めは、単に右から左へという意識でいたけれど、荷物の量を改めて確認したそのとき、このままではいけないと思った。

 ということで、始まったプチ断捨離。
 いつか使うととっておいた紙袋や、着なくなったTシャツやブラウス、そして長らくかわいがったぬいぐるみ。
 押入れや抽斗を開けるたびに、不要なもの、今の自分に必要ないものは手放そう、と心に固い決意が生まれた。

 その意識が完全にできあがったせいか、今は実物が目の前になくても、今日は帰ったらあれを捨てようとイメトレもできてしまうほど。
 不思議なことに、いる・いらない、もしくは、捨てる・捨てないという取捨選択は、すればするほど自分を強くするような気がする。

 そういえば、とここである小説を思い出す。
 それは、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』だ。
 手元に本がないので詳しくは書けないけれど、コインロッカーで生まれたふたりの少年の片割れ、「キク」がこんなセリフを言うワンシーンがある。

「自分の欲しいものが何かわかってない奴は石になればいいんだ、・・・だって欲しいものが何かわかっていない奴は、欲しいものを手に入れることできないだろう? 石と同じだ・・・」 

 この作品を読んだのは、確か高校生のころだったと思う。
 当時のわたしは、このセリフをノートに書き写した。
 
 自分の意見を持つこと。
 それよりも先に、自分の意思を持つこと。
 わからないならわからないでいい。
 そう言うことが大切。
 自分の思いは、言葉にしないと相手には伝わらない。
 言葉にするには、意見がいる。意思がいる。

 究極に未熟な精神しか持ち合わせていなかったわたしは、そんなことをひとりぐるぐる頭に巡らせていた。

 春先、頭の中で右から左へ思考を移すことすらできなかったとき、わたしは石だった。
 1番怖いと感じたのは、毎日夕食に食べたいものがなかったことだ。
 お腹は空くのに食べたいものが見つからないなんて、どんなに自分のことがわかっていないのか。自分は欲を無意識のうちに抑制している、そんなふうに思った。

 7月に入り、誕生日を迎え、石の呪縛は解けつつあるのだろう。
 今は自分の取捨選択に自信が出てきた。

 こういう調子のよいときは、攻めていこう。
 とにかく選んで選んで選びまくるのだ。
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by fastfoward.koga | 2012-08-02 21:36 | 一日一言 | Comments(2)
Commented by jinsei-rarara at 2012-08-12 16:38
引越しの予定はないですが
コガさんの読んで、あっ、だんしゃろうと決意です。
そう思って見るといつもよりも物が多いように見えます。
いつ買ったのか分からない物まで見えてきます。
引越しはお盆休みに、ですか?
Commented by fastfoward.koga at 2012-08-14 23:16
jinsei-rararaさん、こんばんは。
きもちが断捨離に傾いているせいで、職場でもガンガン整理をしているコガです(笑)。

見方を変えると、モノって多く見えますよね。
まだ詰められていない荷物がたくさんで、今まさにわたしはその状態です!
明日、引っ越します! やったー!