言霊の幸わう国

わたしの仕事は

 先週、働きながらずっと、仕事と疲労について考えていた。
 次から次へと押し寄せる仕事の波をかぶっては水面から顔を出し、またかぶって浮き上がる。
 そんな感じだった。
 毎晩、きつい坂道を上ってうちに帰り、ざっぱな夕飯をすましたらもうそれだけで動く気にもならず。
 朝起きるのもつらく、きもちは這うようにして毎朝の電車に乗っていた。

 でも不思議なもので、いつごろからだろうか、仕事から逃げ出したくなる気分に襲われることはなくなっている。
 今いる場所で働き続けることに漠然とした不安を抱き、よその芝生の青さにも憧れたけれど、今の仕事をやるしかないのだと思うようになってきた。

 高校、大学のころは、自分にしかできないことを仕事にと夢見た。
 誰にでも「天職」は必ずあって、どうして自分はそれが見つけられないのかと思ったこともある。
 最初の「超氷河期」と呼ばれる時期に就職活動に失敗し、大学卒業後入社した会社は1年で辞めた。
 その後今の会社にパート採用で入社して、数10年、なんだかんだ言いながらいつづけている。
 通勤時間2時間弱以内での異動を何度か経験し、その中で自分の天職はこれだと思った時期もある。
 データを分析する、研修のインストラクションをする、部下育成をする。
 そのときどきで得意だと思えることをやれていた。
 でも30代半ばに近づくと少しずつ道が逸れていき、だんだん違う方向へ進んでいった。
 軌道修正をしようと転職も考えたものの、結局は今の会社から離れられなかった。
 だからここ数年は、今までとはまったく異なる部への異動を希望していた。
 
 やりがいも楽しさも感じられず、見つけることもできず、でもなにもないところへ足を踏み入れる勇気もなく、同じデスクに座る毎日。
 留まっていることへの不安。
 果たして自分の仕事のやり方は、他所で通用するのだろうか。
 気をもんでいたのは、それだけではない。
 年齢と責任と業務内容のバランス。
 迷いに迷い、悩みに悩んだ挙句、ものさしをなくしてしまった。
 世間のものさしも、自分のものさしもわからなくて、これでいいのかと問うてばかりいた。

 なにがきっかけだったのか、よくわからない。
 ただ、部屋でぼんやり座り込み立ち上がった瞬間に、これしかないのだという答えが下りてきた。
 今の仕事は若いときに憧れたようなキラキラ光るカッコつきの「天職」でもなければ、自分をブランドにするようなクリエイティブさや職人のようなやりがいに満ちているわけでもない。
 けれど自分がやる仕事は目の前にあるものでしかない。
 10代、20代の自分が知ったら、必ずがっかりするだろう。
 力が抜けて、立っていられないかもしれない。
 でも40代を目前にしたわたしは知る。
 仕事はそういうものなのだと。
 
 20年前のわたし、ごめんよ。
 もっとどこかでがんばってればよかったよねえ。
 でもプライドだけ高くて変なところだけ器用なわたしじゃ、これが関の山だったかもしれん。

 と、心の中でつぶやいて、わたしはまた働く。
 夢に満ちあふれていなくとも、やりがいに背中を押されなくとも。
 生きてゆくために働く。
 それがわたしの仕事。
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by fastfoward.koga | 2012-09-19 22:16 | 一日一言