言霊の幸わう国

8月の巻

1 宮本輝    オレンジの壷(下)・講談社文庫 ※                   
2 宮本輝    にぎやかな天地(上)・講談社文庫
3 宮本輝    にぎやかな天地(下)・講談社文庫
4 湯本香樹美  岸辺の旅・文春文庫
5 綿谷りさ   勝手にふるえてろ・文春文庫
6 宮部みゆき  楽園(上)・文春文庫
7 宮部みゆき  楽園(上)・文春文庫
8 小路幸也   マイ・ブルー・ヘブン 東京バンドワゴン・集英社文庫


 こんなにも小説を読んだのは、いつぶりか。
 8月はただただ、物語を紡ぎだす言葉を追いかけました。

 7月から始まった宮本輝ブーム。
『オレンジの壷』を読み返すことから始めましたが、ここは読んでいないものを! と勇んで書店へ行き、迷った挙句手に取ったのは『にぎやかな天地』でした。
 読み始めてから、きもちよく文章が体に入ってゆくのが爽快でした。
 物語の舞台は京都と西宮の甲陽園周辺ですが、馴染みがあるということを差し引いても、読んでいる自分が物語の中にいるという感覚にわくわくしました。
「自分が物語の中にいる」という表現はよく使われるものではありますが、わたしが感じたのは、自分が物語の登場人物になったようであるというのとは違い、物語が繰り広がる世界にぴたりとくっついている、という感覚でした。
 続きが気になって、引越し作業の手を止め一気に読んだ下巻。
 読み終えたのは午後でしたが、ごろりと横になっていたわたしは最後のページに指を挟んだまま、うとうとしました。
 クーラーの設定温度を高めにしていたせいもあり、無意識に汗をぬぐいながら、頭の中でうごめくビジョンが夢か現実か判別がつかめませんでした。
 けれどぼんやりした頭で、あぁ今自分は物語の世界にほんとうに入り込んだのだと思い、それを言語化したときに、眠っているはずの自分の胸の中から湧き上がってくる不思議な感情に、意識は最後のとどめで押し流されてゆきました。

 長らく本を読んでいますが、こういう体験はまれです。
 小難しいことなど考えず、ただ物語に身を浸す。
 それはまさに至福です。

 最後に、宮本輝の関西弁は最高です。
 関西弁で小説を書く作家は他にもいますが、わたしは彼の関西弁が1番しっくりきます。
[PR]
by fastfoward.koga | 2012-09-30 21:50 | 本の虫 | Comments(0)