言霊の幸わう国

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 恋をした。
 相手は、とびきり若い。
 昨年卒業研究で、25歳の主人公が15歳年上の彼女に振り回されて島根を旅する小説を書いたけれど、そんな年齢差のシチュエーションが自分にふりかかるとは思ってもいなかった。
 驚きだ。
 でも、気づいた。
 惹かれているとか、気になる、ではなく、恋をしたのだとその夜眠りにつこうとした瞬間、自覚した。
 けれど面倒なのは、自覚はしたけれどすんなり事実を認めなかったことだ。
 気づいてからずっと、心の中にある保存庫に納めていた。
 ときどき中を覗き込んで、このきもちはなんなのかと、フィッティングルームで洋服をあれこれ試着するみたいに言葉を当てはめた。
 そうしてやっと10日たって、初めの一文が頭に過り、ここに書いた。
 でも状態的に言えば、正しい表現ではない。
 いい大人が、数日考えてどんどん遠くなるその一時だけを捉える表現しかできないのは、往生際が悪いと思う。
 でも悲しいかな、今は事実と認めた思いを自分でもてあましている。
 いつだって恋をしたら、体の中のコンプレックスが急にむくむく動き出すタイプなのだ。
 今の状況は、それに拍車をかけるにはもってこいだ。
 アクセルは全開、スピードは留まるところをしらない。
 わたしがもっと若かったら、口にしたくない台詞も喉元にせりあがってきた。
 けれど、言い出したらキリがない。
 あと10歳、いや15歳若かったとしても、わたしは言い訳や逃げ道を探したはずだ。
 だったらせめて、年齢のせいにはしたくない。
 自信はなくとも、臆病風に吹かれても、今立っている自分は振り返れば続いている道を歩いてきたのだから。

 そうしてわたしは、毎夜彼が健やかなる日々を過ごせるようにと祈る。
 先のことはわからないし、あえて考えたりしない。
 スマホでは書くという感覚からはほど遠いが、今しか記して残せないという思いが自分を突き動かした。
 寒空の下なにやってんだか。
 でも書いたら、きもちがすっとした。
 明日も彼に笑って話しかけれると、いい。
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by fastfoward.koga | 2012-11-26 20:35 | 一日一言