言霊の幸わう国

次の1周

 今日はNくんのお墓参りに行ってきた。
 彼のお墓は午後からは日陰になるので、てっぺんの空は青空だというのに、風は冷たく小一時間の間に体は冷えてしまった。
 墓前にお花とマーブルチョコとマミーを供え、お線香に火をつけた。
 いつもながら、お線香に上手にあげられない。
 要領悪いねと、思わず彼につぶやいた。

 お線香の香りを感じながら、手を合わせて目を閉じる。
 話したいことはいっぱいあって、そこに彼がいるような気がして目を開けた。
 ふいに、あちこちに散らばる昨日降った雨の跡が目についた。
 時計を見る。
 夕方の待ち合わせまでの時間をとっさに逆算し、桶に水を張った。

 お線香をあげたあとに掃除するなんてこれまた要領悪いねえ、とまたつぶやく。
 固く絞ったタオルで墓石をぬぐったら、ひやりとする石に手を伸ばした。
 そしてつるつるの表面を、何度も撫でた。
 
 1度は、帰ろうとした。
 でも今日はなぜかうしろ髪をひかれて、元の位置に戻った。
 正面に彼を見すえ、再び対話が始まった。


 どうしてだろう、最近ずっと昔のことを思い出している。
 記憶は脈絡なく、あちこちから湧きあがり、ぐるぐるとわたしを取り囲む。
 思い出す行為は、きもちが後ろ向きだというよりは、1周して次へ進む準備をしている感覚。
 今度の1周は、どこへ続くんだろうな。
 そんなことを考えている間にも、わたしは先へと進んでいっているのかもしれない。
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by fastfoward.koga | 2013-02-17 00:03 | 一日一言