言霊の幸わう国

2月の巻

1 津村記久子 カソウスキの行方・講談社文庫 
2 藤谷治    船に乗れ! Ⅰ合奏と協奏・ジャイブ 
3 ジョアン・ハリス・那波かおり訳
           ショコラ・角川文庫 ※ 
4 角田光代   空中庭園・文春文庫 ※ 
5 石井睦美   キャベツ・講談社文庫
6 藤谷治     船に乗れ! Ⅱ独奏・ジャイブ
7 クラフト・エヴィング商會
           ないもの、あります・ちくま文庫 
8 藤谷治    船に乗れ! Ⅲ合奏協奏曲・ジャイブ


 小説には、読み始めから鍵穴に鍵がはまるように物語に入りこめるものと、そうでないものがあります。
 2月に読んだ3冊『船に乗れ!』は、後者にあたる作品でした。
 この3冊、実は手にしていたのは2年近く前。
 2010年の本屋大賞にノミネートされ、しばらく経ったあと友人から借りたものでした。
 借りたといっても、返してくれなくていいからねという友人の言葉に甘え、本棚に置きっぱなしにしていましたが、100読を目標に掲げた今年、お財布事情が厳しいときにふと思い出してやっとページを開きました。

 借りたの単行本だったため通勤に持ち歩くには重く、寝る前に読んでいましたが、なかなか読み進められませんでした。
 それは睡眠不足の毎日だったというだけではなく、著者へのイメージがそうさせていたのだと思います。
 さかのぼること数年前、わたしは著者藤谷治のデビュー作を買って読んだことがありましたが、その作品と相性が悪く、それはこれまで出会った作品の中で今でも1番と言えるものでした。
 そのせいで、本屋大賞7位というブランド的なものにひかれ借りたものの、読む気にはなかなかなれなかったのです。

 案の定、読み始めはしっくりこない文章に手こずりました。
 けれど主人公と主人公を取り巻く世界が描かれたところで、やっとひと山越えた感じがしました。
 なんせ3部作の物語なのです。物語の世界の大枠が数ページでできあがるわけがありません。
 起承転結の「起」から「承」に移るまでは、じっと我慢だと内心思っていました。
 そうして読み終えた1部(1冊)以降はつっかえることなく、最後は睡眠時間を削ってまで読みました。

 物語はチェリストの高校生の男の子が主人公で、彼の高校3年間を描いています。
 舞台は、決して一流とは言えない音楽科の高校です。
 わたしはどの登場人物にも感情移入できず途中もどかしい思いもしましたが、努力しても届かない世界があるという事実を描く物語に最後は胸が詰まりました。
 主人公にふりかかった、そして自ら招いた出来事との数々とその結末に、正直厳しさを感じました。
 けれどそれこそが本屋大賞にノミネートされた理由なんだなと、最後に理解できたのでした。
 
 3部作を読み終えて作品、著者に対して思うことは多々ありますが、手応えを感じられた読書体験となりました。 
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by fastfoward.koga | 2013-03-10 17:30 | 本の虫