言霊の幸わう国

サークル・トランスファー ~スロースタート

★7月22日(月)
 8:16 尾道駅発 ⇒(山陽本線)⇒ 8:37 福山駅着
 8:43 福山駅発 ⇒(福塩線) ⇒ 9:28 府中駅着   -府中散策(昼食)-
 12:32 府中駅発 ⇒(福塩線) ⇒ 14:21 三次駅 
 15:14 三次駅発 ⇒(芸備線)⇒ 17:08 広島駅着   -(知人と夕食)


 2日目、ようやく列車に乗る旅が始まった。
 朝だらだらしているのはもったいないと、8時過ぎには尾道のホテルをチェックアウトしたけれど、府中駅での乗り継ぎは3時間。
 ロクな下調べもせず、心のどこかでスマホがあればなんとかなるかと思っていたのが裏目に出た。
 あとで考えれば、せめて「あまちゃん」を見てからチェックアウトをしてもよかったし、府中じゃなく福山の滞在時間を長くすればよかったのだけれど、とにかく列車に乗ってしまいたいという思いが先走ってしまい、結果、府中では一体なにをしにきたのかよくわからない時間を過ごした。

 と言っても、3時間なにもせずにぼおっとしていたわけではない。
 駅の待合室で数枚のハガキを書き、歩いて10分程度のスーパーへ行ってメモ帳とポストカードを書い足し、また駅に戻って文庫本を開き、11時半になったら駅の近くのお店に昼食を食べに出かけた。
 戻ってきたしばらくすると、12時32分発の列車はすぐにホームへ入ってきた。

 2両編成のワンマン車の乗り込むと、後ろからにぎやかな女の子の集団が追いかけてきた。
 4人がけのシート背中に当たるロングシートの隅に腰かけると、高校生なのだろう、彼女たちが近づいてきた。
 確か7人ほどいた。ロングシートで向かい合って、分かれて座る。
 ひとりは、わたしが横に置いたリュックのすぐそばに座った。
 あぁ、もう少し離れてほしかったなあと思いながらも、もう席を移る気にはならなかった。
 そっとのぞき見してみると、みな泳ぎに行くようだ。
 ポケット時刻表の路線図を眺め、彼女たちが泳ぎに行くような場所がある駅はどこなのか探してみた。
 でも土地勘がわるわけではなく、見たところで検討もつかない。
 どのくらい一緒に乗っていなければならないのか想像して、小さくため息をついた。

 初めは、想像どおりの騒がしさだった。
 本当はホームで食べるつもりだったのだろう、コンビニの袋から冷麺やらおにぎりやら唐揚げが出てきた。
 食べ終わったら、今度は水着は着てきたか、駅からどのくらい歩くのかと話し出す。
 いったいどの駅のどの町にプールなどあるのだろう、わたしは目を閉じて彼女たちの話を聞くとはなしに聞いていた。
 すると、ひとりが浮き輪を持ってきた持ってきていないと口にしたとき、別の誰かが「天然のスライダーがある」と言い出した。
 あぁ、彼女たちが向かっているのはプールではなく、川なのか。
 疑問が解けたところで、わたしはうとうとし始めた。

 そのあと数駅先で、彼女たちは天然スライダーのある川を目指して列車を降りていった。
 車内は、案の定静かになった。
 駅を出てしばらくすると、窓の外にしぶきを上げる川が見えた。
 あの子たちはこの陽射しと暑さの中、ここを目指すのか。
 そう思うと、くらくらした。
 でもきっと、わーわーきゃーきゃー言いながら歩くのも、彼女たちは楽しい時間なのだろう。
 それは、ちょっと面倒なような、うらやましいような。

 そうして1日列車に乗り続けたけれど、今自分が旅をしているという実感はまだ薄かった。
 体は日常からは離れた場所にあるというのに、頭と心がまだ追いついてきていなかった。
 置いてきた頭と心が細い糸で繋がって、いつもの場所から引っ張られているような感覚。
 現にその日もまだ日常の世界からの連絡は途切れず、ほっぽり出してきた罪悪感からいちいち律儀に返事を返していた。
 鎧は脱いでもぬぐえないものが、まだあったのだ。
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by fastfoward.koga | 2013-08-18 15:20 | 旅行けば