言霊の幸わう国

楽しい恋を

 週末は、へこみにへこんだ。
 へこんでへこんで、ぺしゃんこになる寸前だった。

 これまで人生、何度もへこんできた。
 でも人は、いやわたしがか、喉元すぎればなんとやらで、つい最近もへこんだはずだというのに、元に戻る術がすぐには思い出せない。
 昨夜はベッドの上で右に左に寝返りをうち、長座椅子の上でううっと唸り、やるせなさももどかしさも消化できずじたばたして過ごした。

 こんなにへこむ原因は、わかっている。
 単なる、わたしの考えすぎだ。
 先々まで考え、(控えめな表現を許してもらえるなら)妄想に近い想像をし、期待をしすぎることが悪いのだ。
 なんにも、彼のことはまだなんにも知らないのに、ひとり頭だけ使ったってどうしようもない。

 漠然とだけれど、これまで時間をかけて縮めてきた彼との距離がここにきて少し広がったように感じている。
 カチリと音が鳴ったように思った歯車が、狂い始めたのかもしれない。
 それは勘でしかないのだけれど、そういう勘は当たる(気がする)。
 ほんとうは今すぐにでもその距離を、せめて元に戻せるようにしたい。
 でもそれはしょせんは、あがき。
 漕げば漕ぐほど波が立ち互いに近寄れない2艇のボートが、頭の中に浮かんでいた。

 じたばたしながら、不毛だなあと、声に出して言ってみる。
 きっかけになったメールを読み返す勇気もなく、口にした言葉は空気に溶けた。
 それでも夜が更けてくると、少しでも彼と繋がっていたいという感情が湧いてきて、再びメールを開いた。
 数行のメールのひと文字ひと文字を、行間を、さっき読み取れなかったものがないか確認する。
 なんてことは、なかったのかもしれない。
 ただわたしが期待してハードルを上げただけのことで、あれほどまでへこむことはなかったのかもしれない。 日付が変わってから、自分で波立たせる感情の起伏に疲れきって眠った。 

 昨日買った小説に、こんな一文があった。
「ひと目惚れは風邪引きで、恋になれば病になり、愛は重病で、結婚は入院だと。」
 ふうんと、ページを捲る。
 すると、次のページにはこんな一節。
「『あのさ』 ― と記憶を辿っている私の目を覚ますように姉さんが私の肩を叩いた。『言っとくけど、ひと目惚れしたばかりなのに離婚のことまで考えるなんて馬鹿らしいよ。まだ風邪引き程度のリスクなんだから、思う存分、楽しまないと』
 姉さんの顔がやけにニヤニヤしていて、どうやら姉さんは他人事だと思って楽しんでいるようだった。」

 そう、自分じゃない誰か他の人の恋なら、笑って聞ける程度の話。
 そんなに深刻ぶることもない。

 あららららーと、別のところから自分の声が聞こえた。
 他人事みたいに恋ができたら、いいなあ。いいなあ。いいなあ(こだま風)。
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by fastfoward.koga | 2013-08-18 22:11 | 一日一言