言霊の幸わう国

22年ぶりの上巻

 今日、谷崎潤一郎の『細雪』の上巻を買った。
 中下巻は20年近く前に購入していたのに、なぜか本棚に並ばなかった上巻。
 飛ばして読むなんてことは絶対にしないので、おそらく図書館か友人に借りて読んだのだろう。
 当時から読む本は自分のものにすることがルールで、今買わないとあとで困ると思ったことは記憶しているのに、その理由はさっぱり思い出せない。
 でも、なにかのきっかけで手にした上巻を手放して買うのももどかしく、もういいやと読み始めた気がする。

 谷崎を初めて読んだのは、大学のとき。
 他校の非常勤講師の先生が谷崎を専門としている人で、授業で紹介されたのをきっかけに興味を持った。
 当時授業の空き時間に、友人と『細雪』を執筆した倚松庵に見学に行ったこともある。
 読みかけの本を持って祖母のうちに泊まりに行ったら、「そんなん読むのかあ」と祖母がうれしそうな顔をしてくれた。
 その祖母は、軽い認知症で母のことはわかってもわたしの名前はもう思い出せないのだけれど、祖母に会いに行くといつも『細雪』が思い出された。

 中下巻に記した購入日をながめ、なにか塊のようなものが胸から下がり胃のあたりで留まるような感覚を覚える。
 そして今気づく、
 上巻と中下巻とでは文字の大きさが違っている。
 カバーが変わっていないので、中が変化しているとは思いもしなかった。
 今日わたしが購入したのは、新装版だったのだ。

 22年の時を、わたしはちゃんと生きてきたのかな。
 少しセンチメンタルなきもちになりながら、22年ぶりに『細雪』の世界に身を沈める。
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by fastfoward.koga | 2014-08-12 22:26 | 一日一言 | Comments(0)