言霊の幸わう国

開いた掌

 部屋にいると、どうしても定位置ができてしまうものだけれど、最近休みの日にはそれをあえて崩すようにしている。
 昨日もいつもなら座りもしない窓のそばに寝転がり、買ってきた本を読んでいた。
 昼過ぎから降り出した雨も少し弱まり、風が吹いてカーテンをふわりと揺らしたその端をつかまえ、網戸越しに空を眺める。
 片方の手を本の間に挟んだまま、薄灰色の雲の模様を視線でなぞった。

 そこでふと、いつかの夜に見ていたスーパームーンを思い出す。
 そして、すきな人のことも思い出す。
 わたしの人生はこんな記憶でできあがっているのだなあと考え、そういう記憶が積み重なってきていることの歓びと、一方で記憶だけで留まる歓びというものへの寂しさを募らせた。

 いかんいかん。ひと月は仕事に集中しようと決めたのだ。
 少しだけ、離れよう。
 握りしめた執着を、1本1本指を開いて解き放つために。
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by fastfoward.koga | 2014-08-25 22:32 | 一日一言