言霊の幸わう国

8月の巻

1 宮本輝    幻の光・新潮文庫 ※
2 林真理子   白蓮れんれん・集英社文庫
3 谷崎潤一郎  春琴抄・新潮文庫 ※
4 谷崎潤一郎  細雪(上)・新潮文庫 ※
5 谷崎潤一郎  細雪(中)・新潮文庫 ※
6 谷崎潤一郎  細雪(下)・新潮文庫 ※
7 北村薫    八月の六日間・角川書店

 ※印は読み返した本です。

 
 北村薫の『八月の六日間』は、書店で何度も買おうかどうしようか迷っていた1冊でした。
 迷いの要因は今の自分が読むとはまりすぎていると感じたからでしたが、夏の終わりに、小さな本屋で再会したとき、ようやく読む気になりました。
 内容は極端に要約すると、アラフォーの女性雑誌編集者があちこちの山に登る話なのですが、帯には「自分も山を歩いて無心になった気分になれる」とか「元気をもらえる」、「滋養深い」と書かれており、正直買うのにためらったのはこのコピーが引っかかっていたのだと読み終えて気づきました。
 実際自分が読み終えて、元気をもらえる感覚がわからないでもありません。でも、物語にはもっと違うものが描かれているのにな、と思わずにいられませんでした。
 わたしはこの物語を読んでいて、どっと疲れました。それは、主人公の心身の疲労感がリアルに感じられたからです。そして最後の最後にほおっと息をつき、そのあとすがすがしさがやってきました。

 帯のコピーを見て、そうか元気になれるのかと読んだ人にも、あちこちにちらばっている刺のような言葉を逃さないでほしいと思います。
 流れるように読めるだけに、流して読むにはもったいない作品なのです。


 そして8月、印象に残っているのはやはり『細雪』です。
 お盆休みの期間に数日かけて読んでいたので、夢にまでぼんやりと小説に描かれた昭和初期の阪神間の風景が出てきたほどどっぷり浸かっていました。
 三女雪子の煮えきらなさ、末っ子妙子の身勝手さにきりきりしながら、1番共感するのは二女の幸子やわあ、なんて思いつつ、これだけの長さの物語を読むのは久しぶりだったので、ほんとうに楽しみました。 

 そして、読み終えたあとにおまけがひとつ。
 今読んでいる堀江敏幸の散文に須賀敦子の名が出てきて、ふと本棚から彼女のムック本を手に取りました。
 追悼特集として河出書房出版から出ていたその本に確か堀江敏幸の文章があったなと、ペラペラめくっていたら、偶然にも須賀敦子の『細雪』の評論が掲載されていました。
 こういうご縁が、読んだあともわたしを楽しませてくれます。


 数年ぶりにどこにも旅せず移動もしなかった夏でしたが、山登りの疑似体験と昭和初期へのタイムトリップで夏は終わりを迎えました。
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by fastfoward.koga | 2014-09-06 21:58 | 本の虫 | Comments(0)