言霊の幸わう国

今こそ、本

 秋ごろから、仕事の帰り道はずっと音楽を聴いていた。
 そのころ読んでいた本が読み進めにくかった、というのもあるけれど、1番の理由はすーすーする心の隙間を埋めるには音楽がてっとり早かったから。
 iPhoneの中に入れたいくつもの音楽で、なぐさめられたり、ほっとしたり、気分が上がったり、自分を奮い立たせることもできた。

 音楽には音楽の力があるのは間違いないけれど、今思うと、わたしは少し容易な手段に頼りすぎた。
 そういうことは、今まで本を読むことでできていたことなのだ。
 いつしか気がつけば、自分の今のきもちに寄り添う本を探すための気力と時間を捻出することを、億劫がってしまうようになっていた。

 そんな自分は、ほんとうにつまらない。
 そして同じように、最近どこの書店もおもしろくない。

 平積みされている本は、みな同じ品ぞろえ。
 背表紙を向けている本も、元を正せば平積みされていたものが並んでいるだけ。
 ふいに思い出して、文芸のときに教えてもらった作品を探そうにも、その作家の作品はひとつも本棚にない。
 出版社別に並んでいるならまだましなほうで、それが探しやすいからなのか、文庫本でも出版社を無視して作家別に並べられているところなど、本棚に手を伸ばす気にもならない。
 書店で本と出会うことを楽しみにしている自分には、アマゾン的に買えればいいというきもちもさらさらないから、楽しみを奪われているようで一気にきもちが萎えてしまう。

 でも、今、10数年ぶりに手に取った『窯変源氏物語』がおもしろい。
 想像以上だ。
 特に年が明けてからは、どんなに疲れていても、落ち込んでいても、イヤホンを耳に突っ込むことなく貪るように源氏のひとり語りを読んでいる。
 
 読書のおもしろさを甦らせたのが読み返しの本だということは少し複雑ではあるけれど、正直自分の世界に戻ってきた、という感じがする。
 これからは、つまらない書店に負けず、平積みの本を容易に選択せず、また新たな出会いを求めて書店を彷徨おう。

 新しくすきなものを見つけるのが、今年の目標。
 だけど、やっぱり本がおもしろい。 
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by fastfoward.koga | 2015-01-27 22:24 | 一日一言